生徒がかんたん号外くんで製作した新聞

産経新聞の新聞製作アプリ「かんたん号外くん」を使って読解力向上を―。東京都千代田区立九段中等教育学校(野村公郎統括校長)の朝倉直美教諭は、2年生の国語の授業で、太宰治の『走れメロス』を題材に、取材記者となって登場人物一人に焦点を当てて記事を書く想定で、時系列でその心情や背景を読解させた。生徒はメロスだけでなく、その妹や友人のセリヌンティウスの行動を読み解いた新聞が完成した。

『走れメロス』の授業は5時間かけて行われた。最初の3時間で登場人物の性格や人物像をとらえ、全体の内容と、メロスや王らの時間経過による心理の変化を読み取った。

この日の授業で朝倉教諭は、登場人物一人にスポットライトを当てて新聞を作るように指示し、新聞設計シートを配布した。

シートには「主見出し」「袖見出し1」「袖見出し2」「リード文」などの項目があり、記事は「大事なこと→説明→情景→補足」の順で書くように指示している。

朝倉教諭は見本として『桃太郎』の犬を主役に作った号外新聞を貼り出した。「犬、警視総監賞受賞 見事に鬼を退治 桃太郎を仲間にして」と書かれた新聞を指して、「太宰治が書いていないことは想像で書き加えてもいいですよ。ただし、他の部分と矛盾しないように」と注意した。

生徒は、焦点を当てた人物の5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を考慮しつつ、作者と違う視点で作品を見るように努めることで、選んだ人物の行動を客観的に理解できたようだ。

「親友に人質にされ三日」を見出しにした新聞は、「メロスを信じて待ち続ける」セリヌンティウスを主役にして、「(メロスなら)絶対に帰ってくるという信頼がありました」とのインタビューコメントを創作した。

妹を主役に「豪雨の中の結婚式」とした新聞では、「歓喜に酔って幸せな結婚式は幕を閉じた」と表現。「メロスの運命を握る!」とした紙面では、これからを予感させる「大雨」や行く手を阻んだ「濁流」、希望を与えた「清水」という3つの水を取り上げた。

朝倉教諭は「取材」とすることで登場人物の心理や行動を読み解きやすくなり、物語を要約・再構築できたと評価。新聞を作成させたところ、想像以上の作品や意外な発想が多数出て、生徒の思考力や表現力を引き出せたのではないかとした。

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