フリスクも、ミンティアもなかったその昔。ミント菓子といえば、ドロップ缶を振りまくって何とか引き当てるハッカドロップくらいしかなかった頃のことだ。中学生だった自分は電車に乗って出かけた輸入雑貨店で、とあるミントタブレットと運命的な出合いを果たす。なんせ、そのパッケージのかわいいこと。たかがミントタブレットを入れる使い捨ての缶なのに、このレベルの高さって……。アメリカすげー! と、ここからアメリカかぶれが始まったと言ってもいいと思う。
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あれから何十年もたったが、最近、そのミントタブレットのかわいい缶が、世界中のティーンの注目を浴びている。今週のお題「アルトイズウォレット」だ。アルトイズはそのミントタブレットのブランド名。その缶をウォレット(財布)代わりに使い、こんなものを詰めていると自慢する写真や動画がSNSなどであふれている。
たしかにこの缶、今の時代のウォレットと呼ぶのにぴったりだ。まずクレジットカードがあつらえたように入る。小銭を入れるとカチャカチャうるさいが、キャッシュレスで小銭はなくても暮らせるようになった。
普通の財布と違って厚みもあるので、アクセサリーを入れたり、今どき誰もが持っていて、誰もがなくしたりしがちなワイヤレスイヤホンを入れるのにもちょうどいい缶となっている。
TikTokをアルトイズウォレットで検索すると、財布代わりに使っている人のほか、思い思いにデコレーションした缶のなかに小さなぬいぐるみを入れてドールハウスふうにしたり、メーク道具一式を入れたりした投稿もたくさんあった。
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実は自分も、アルトイズの空き缶に、その時代ごとの「らしい」グッズを入れていたことを思い出した。例えば高校生のときはヘアピンやイヤリング、リップクリームなど。大人になってからは、たばことライターを入れていたことも。やがてSDカードやUSBメモリーなどを入れていた時代を経て、今はなんと、お香とマッチを入れている。いかん……もっとキラキラしたものを入れなくては!
そう思って、すっかりペイントがはげたアルトイズウォレットを新調しようと、輸入雑貨店をハシゴしてみた。ところが以前は買えた店でも、今はほとんど買えない事態に。最後に訪ねた上野アメ横の輸入菓子店「芳屋」で再会を果たした。聞けば現在はここが輸入元だという。
「一時輸入が止まった時期がありましたが、今年1月から再開。缶を目当てにいらっしゃる方はまだ少なく、昔いつも口にしていた懐かしい味として買われる方が多いですね」(同店)
そう聞いて、購入したアルトイズを口に入れてみると、安定の容赦ない刺激と、たばこやらお香やら、この缶に入れていたいろんな物の思い出が走馬灯のように頭を巡った。あ、そんなことより今はこの缶に、キラキラしたものを入れなければ! 高い買い物になるが、ちょうど宝石店も多いこの地に来ているわけだし。すみませーん! あのショーケースのネックレス、見せてもらっていいですか?
(福光 恵)
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