選択的夫婦別姓制度の導入を求めている一般社団法人「あすには」(東京都)は、自民党総裁選の立候補者を対象にしたアンケートの回答を公表した。候補者9人のうち回答したのは5人。このうち明確な賛成は2人、反対は1人で、2人が賛成寄りの考えを述べつつ立場を明確にしなかった。
設問は5問で、制度導入への賛否や当事者の声を聞く機会を設けるかどうか、国会での議論の必要性などについて選択式で尋ねた。
「総裁になったら、選択的夫婦別姓の法制化を進めるか」という質問に対し、小泉進次郎氏と河野太郎氏が「進める」と回答。高市早苗氏が「進めない」と答えた。上川陽子氏と石破茂氏は選択肢を選ばなかった。
選択の理由について、小泉氏は「多様な価値観、生き方が広がっている中、苦しむ人たちがいる。自分自身の経験からも姓が違うことは家族の崩壊につながるとは考えていない。党としても決断すべきだ」、河野氏は「さまざまな支障を感じる人がいる以上、政治は対応すべきだ」と述べた。
一方、高市氏は、旧姓を通称として使える措置を国や事業者などに義務づける法案を国会に提出すると説明。この法案が成立すれば、「姓が変わる不便はほぼ無くなる」とし、制度を導入する必要がないと主張した。
法制化を推進するか否かの回答を避けた上川氏は、自由記述で「私自身、結婚で名字を変えた時はアイデンティティーの喪失を感じた。当事者の気持ちがとてもよく分かる」と心情を明かした。そのうえで「かつて賛成の立場で党内議論に参加し、激しい対立に直面した。無理に決めると分断が生まれると危惧している」とし、国民の理解や合意を得て結論を導くべきだとの見方を示した。
石破氏は「基本的に賛成だが、党内で真摯(しんし)な議論をさらに進めてコンセンサス(合意)を作る努力をすべきだ」とし、反対派への配慮をにじませた。
「党議拘束を外して、法案を国会に上程し、国民に開かれた場で議論すべきだと考えるか」という問いには、小泉氏と河野氏が「はい」、高市氏が「いいえ」で、上川氏と石破氏は無回答だった。
小林鷹之氏、林芳正氏、加藤勝信氏、茂木敏充氏の4人はアンケートに回答しなかった。
法政大の衛藤幹子名誉教授(政治学)は「高市氏が主張する旧姓使用では、アイデンティティーの問題は依然解決しない。通称使用で事足りると考えるのは人の尊厳を無視した考えだ」などとコメントした。「あすには」の井田奈穂代表理事は「小泉氏や上川氏は自分自身が当事者であることにも触れ、制度の必要性に言及した。党内の合意が得られないからという理由で、困っている人の人権問題を放置していいのかという視点を持って、議論を前に進めてほしい」と要望した。【深津誠】
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