企業でのパワハラについて、社内で被害の訴えを起こすなどしても「解決しなかった」とした人が6割弱に上ったことが、人材紹介サービスを手掛けるワークポート(東京)の調査で分かった。5割弱は「誰にも相談せず我慢」していた。多くが泣き寝入りを強いられており、従業員のパワハラ被害を防ぐ体制が依然として不十分な現状が浮き彫りになった。

調査は3月、ワークポートのサービスを利用する20~40代を対象に実施し、661人から回答を得た。このうちパワハラを「受けたことがある」と回答したのは65・5%だった。その際に上司や相談窓口に相談するなどの対応をとっても「解決しなかった」とする回答が59・1%に上った。

解決しなかった理由としては「本人がやっていないと言い張った」など、加害者の意見が重んじられたとする声が多かった。さらに「担当部署が詳細を聞かずに放置した」「被害を訴えたが上司が握りつぶした」といった悪質なケースもあったという。

調査では、パワハラを受けた際に「誰にも相談せず我慢」したと答えた人は46・4%に上った。「解決した」としたのは12・0%にとどまり、多くが改善が見込めなかったり、キャリア形成への影響を懸念したりして、泣き寝入りを余儀なくされたことがうかがえる。

また勤務する企業でのパワハラ防止策を巡っては、取り組みが行われているとの回答は44・3%にとどまった。このうち61・5%は防止策に「満足していない」と答えた。「相談窓口の担当者がほかの社員に情報を漏らした」などと相談体制の形骸化を指摘する声もあった。

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)を受け、令和2年6月から大企業で、4年4月からは中小企業でもパワハラ対策が義務化された。ワークポートの担当者は「防止策を講じる企業は増加傾向にあるが、正常に機能していないケースがほとんどだ」と指摘し、実効性のある対策が必要だとしている。(重川航太朗)

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