あのとき、何を思い、試合に臨んでいたのか。時を経て対戦相手同士が語らう「After Game Talk」。第2回は、今春の選抜大会決勝で対戦した健大高崎(群馬)の主将・箱山遥人捕手、副将・高山裕次郎二塁手、報徳学園(兵庫)の主将・間木歩投手、今朝丸裕喜投手をオンラインでつなぎ、激闘を振り返ってもらった。

  • 選手が対談で振り返るあの一戦 常総学院×日本航空石川(前編)
  • 選手が対談で振り返るあの一戦 常総学院×日本航空石川(後編)

 ――決勝は昨春の選抜2回戦以来となる顔合わせでした。当時は7―2で報徳学園が勝ちました。今回は3―2で健大高崎が勝ち、優勝しました。

 間木(報) 「(健大高崎は)機動力に加えて、今年は打撃力がある。投手を中心にどれだけ最少失点に抑えるかが勝負の鍵になってくるんじゃないかなという印象がありました」

 箱山(健) 「(報徳学園は)1回戦から好守を連発していた。3点くらい取って、あとはどれだけ守備で粘れるかという思いを持って臨みました」

 ――試合は一回表、報徳学園が2死一、二塁で5番安井康起君の右翼線への2点二塁打で先制しました。

 間木 「自分たちは守備からリズムを作っていくチーム。攻撃からリズムを作れたのは大きいことだったので、このまま良い流れに乗っていけたらなと」

 ――その裏、健大高崎は2死一、二塁で5番の森山竜之輔君の2点二塁打で追いつきました。

 箱山 「森山がこの大会で1安打しか打っていなくて、まさか今朝丸君から長打を打つとは思わなかった」

 高山(健) 「自分も森山がまさか打つか、と驚きました」

 ――勝負の分かれ目は三回。2―2で先攻の報徳学園は1死一塁で二直の併殺打に。

 高山 「正直、『自分のところには飛んでくるな』って思ってたんですけど、ああいう良いプレーができてよかった」

 ――健大高崎は直後の攻撃で、高山君が勝ち越しの適時二塁打を放ちました。

 高山 「(ピンチをしのいで)絶対に良い流れが来ていると全員が思っていた。自分がしっかり打ってやるっていう風に思いながら打席に立ちました」

 箱山 「自分は次打者席で集中していて、あんまり見ていなかったんですけど……。でも、うれしかったです」

 今朝丸(報) 「投手としては追加点は1番苦しい。絶対に抑える気持ちは持ってたんですけど、内角を投げる時にボール1個分、厳しくいったら、(凡打に)切って終わっているんじゃないかな」

 ――報徳学園は2死二塁まで健大高崎を追い詰めましたが、最後は空振り三振で、健大高崎の初優勝が決まりました。

 箱山 「(昨年の)秋につらい思いをしたことが報われた瞬間だなと思いました」

 高山 「秋までうまくいかない中、優勝した瞬間に感情が一気に込み上げてきました」

 ――優勝できた要因は。

 箱山 「健大高崎は日本一になったことがない。何が正解かもわからないままでずっとやってきたんですけど、自分たちで『これが正解だ』と思うことを信念持って、ぶらさず全員で同じ方向を向いてやった結果だと思う」

 高山 「秋が終わって、自分たちの足りない部分をしっかりと明確にしながら、チームの中でも信頼を高め合いながらやってきた結果が出たと思います」

 ――報徳学園の2人は?

 今朝丸 「初回にインコースを長打にされた部分が1番の反省点かな」

 間木「もっと点を抑えられたところはあったんじゃないかなというのはあります」

 ――試合を通じて一番印象に残った場面は?

 間木 「最終回の三振で試合が終わったシーン。ブルペンで見ていて一番悔しかった。あの場面で同点に追いついてたら、自分がマウンドに立つ状況だった。気持ちを作りながら投げる準備をしてたんですけど、それがかなわなかった」

 今朝丸 「初回の2失点。味方が2点を取ってくれて、その裏に自分も2点を取られたのが一番悔しい」

 箱山 「九回の報徳学園さんの攻撃で(応援の)アゲアゲホイホイが始まった時がすごかったです。昨年(の選抜大会)も聞いたんですけど、自分史上で一番でかい応援です」

 高山 「決勝のタイムリーを打った時です。(大事な)あの場面でしっかりと打てた」

 今朝丸 「自分に対してどういう対策をしていたのかを言える範囲で教えてほしいです」

 箱山 「コントロールがいいので、内角のまっすぐは張らないと打てない。自分たちがチャンスの時は内角のまっすぐをどんどん投げてくる投手だと思っていたので、そこを張って、他の球はもうしょうがないという風に待っていました」

 高山 「自分もコントロールがいい投手ということは分かってたので、自信のあるまっすぐが内角に来るから(体を)開くのではなく、逆に踏み込んでいくことを考えながらやっていました」

 今朝丸 「内角を張っているのは、(準々決勝の)大阪桐蔭戦を見てからですか?」

 箱山 「そうですね。大阪桐蔭の映像を見たので内角を投げているとわかったのもあるんですけど、コーチの方からも『良い投手は自信のある球をピンチで投げてくるので、そこを張る』というのはずっと言われていた。今朝丸君のベストボールは何だっていう風に考えた時に、内角のまっすぐなんじゃないかという風に話して、チームとして、そこを全員で張るようにしていました」

 今朝丸 「張っていても打たれないボールを投げられたら一番いいと思うので、そこをもっと課題にしてやっていきたいです」

 間木 「投手として打者を抑えるためにどうしたらいいかと考える場面がけっこう多いんですけど、健大高崎の2人は何を考えて打席に立っているのかを教えてほしいです」

 箱山 「2人とも好投手。自分たちはどう攻められるのかとしっかり考えて、自信のあるボールを張っていかないと打てない。ほんとに良い投手の時はベストボールというか、自信のある球を張るようにしています」

 高山 「自分もコースや球種はしっかり張るようにして、自分の中で徹底する力っていうのを考えながらやっています」

 間木 「自信のあるボールを打たれたらメンタルも切れてしまうので、なかなか抑えるのが難しいなあっていう風に感じます」

 箱山 「決勝で今朝丸君が投げてきたとき、目の色が変わっていた。試合に向けて気持ちの入れ方はどうしているのか気になります」

 今朝丸 「オンオフをしっかりしています。練習前は気を楽にしてやっているんですけど、試合とか練習が始まったらしっかりオンへの切り替えて意識しているかな」

 箱山 「やっぱり良い選手に共通するメンタリティーだと思いました」

 高山 「報徳の2人に聞きたいんですけど、試合に入る前にルーティンというのはあったりするんですか」

 間木 「自分の中では、『考える』ということを意識しています。一番はマイナスなことをよく考えて、そういうことが起きないように気合を入れたり準備したりっていうのはルーティンでやってるかな」

 今朝丸 「僕はルーティンはあんまりないんですけど、試合前に体幹(トレーニング)をしています」

 ――高山君はルーティンあるんですか?

 高山 「自分は打席の中で決まった動きをしています」

 箱山 「戦う前は、何対何で報徳学園さんが勝つと思っていたのか気になりました」

 間木 「3―1ぐらい、ですかね。今朝丸が何とか踏ん張ってくれて、流れに乗って3点ぐらい取れたらいいなっていう感じだったと思います」

 今朝丸 「僕は3対2ぐらいかなと思っていました」

 間木 「健大高崎は石垣投手が準決勝の星稜(石川)戦に投げていたので、(決勝でも)石垣投手が先発でくるとは思っていなかった」

 箱山 「(エースの)佐藤が指のマメを準々決勝にけがをして、投げられる状態じゃなかったというのが一番の理由です。監督が『もう石垣ががんばるしかない』と言いました」

 ――最後に、夏に向けて決意表明を。

 間木 「自分たちは守備からリズムを作る。投手の働きが大きくなってくると思うので、どれだけ失点を抑えて攻撃の流れを持ってくるかというのを意識してやっていきたいなと思います」

 箱山 「昨夏は甲子園に行けていない。まずは甲子園の切符をつかんで、また甲子園で報徳学園さんのすごい応援の中でやりたいです」

 間木 「一番大事な場面で負けているので、リベンジという形で次は勝てたらいいなと思います」

 ――夏の全国選手権大会の決勝で対戦することになったら

 箱山 「春は、今朝丸君に対して思うような打撃ができなかった。間木君、今朝丸君、どちらが来ても大量得点で勝ちたい。10点取るぐらいの勢いでいきたいです」

 間木 「一番は1点も取らせないこと。2―0ぐらいで完封勝利できたらいい。選抜では今朝丸が投げきったので、健大高崎さんからしても、もう対戦は十分かなって思う。僕が全部投げようかな」

 今朝丸 「いや、最後のマウンドは僕がいたいです」(構成・室田賢)

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