(15日、全日本大学野球選手権準決勝、青学大10―2天理大)
青学大(東都)の主将が、いきいきと神宮球場を駆け回っている。
一回。2死から一、二塁の好機を作り、5番の佐々木泰(4年、県岐阜商)が右打席に入った。
追い込まれてからの5球目。内角低めの変化球に体勢を崩されながらも、左手一本ですくい上げた。左翼ポール際に飛び込む先制3ランになった。「うまくバットに乗せられた。手応えはあった」
三回は左前へ、四回は中前へ適時打を放ち、八回は俊足を飛ばし左中間への二塁打。4安打6打点と打ちまくり、コールド勝ちでの決勝進出に貢献した。
「大学に行って高校時代の悔しさを(晴らす)、という思いで入学した。今こういう形で(野球が)できているのは、すごくうれしく思います」
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県岐阜商高の主将だった2020年、集大成となる全国大会は挑戦すらかなわなかった。
春先から世界中を襲ったコロナ禍だ。
練習も満足にできない中、5年ぶりに切符をつかんでいた春の選抜も、夏の全国選手権も中止になった。さらに校内でクラスターが発生し、県の独自大会も出場辞退となった。
「野球ができていたことが当たり前ではないと、この期間に実感した」
その夏唯一の公式戦となった甲子園高校野球交流試合では明豊(大分)と対戦し、2―4で敗れはしたものの九回に本塁打を放ち意地を見せた。
青学大入学後は、1年春のリーグ戦で4本塁打を記録して華やかにデビュー。その後もレギュラーを張り続け、俊足強肩のドラフト候補に成長した。今季は主将として、昨年かなわなかった、春秋のリーグ戦と全国大会を制する「大学4冠」をめざす。
普段の練習や寮生活の取り組みから、人望は厚い。今春の東都リーグ戦は打率1割台と不振に陥ったが、それでも、先発を外れることは一度もなかった。
安藤寧則監督は言う。
「ずっと近くで見てきたが、相当な重圧を背負った中で頑張っている。本人が一番苦しんでいるので、そこは見守って。いつか爆発するときが来ると思う。そう思わせてくれるのもあいつなので」
5月29日、勝った方が優勝となる中大との一戦で、「そのとき」は来た。逆転の決勝3ランを放つと、チームはわきにわいた。試合終了の瞬間は大ジャンプでマウンドに飛び込み、輪の中心になった。
そしてこの大学選手権でも好調を維持し、2本塁打を放っている。
座右の銘は「一生懸命が一番かっこいい」。大学日本一をかけた大舞台に向けて、佐々木は言う。
「全国大会にかける思いは強い。自分たちの野球をしっかりして、最後に良い形で終わりたい」(大宮慎次朗)
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