詰まった打球がレフト前に落ちる。たたき付けた打球が三遊間に転がる。北海道栄は九回裏、2死をとられてからの3連打で満塁の好機をつかんだ。

 点差は5点あるとはいえ、球場の雰囲気はがらりと変わった。高村陽亮選手(3年)は「みんなが何とかつないでくれた。1点でも、もぎとろう」と打席へ向かった。

 昨夏の南大会。2年生ながら捕手としてエスコンフィールド北海道でもマスクをかぶり、甲子園にあと一歩まで迫った。

 新チームになってめざしたのは、守り勝つ野球。その要として、この日も5人の投手をリードした。制球に苦しむ投手陣に笑顔で声をかけ、「これまでやってきた練習は間違っていない。楽しくやろう」と励ました。

 強肩を生かして、2盗も防いだ。三回以外は走者を許したものの、何とか少ない失点で切り抜けていった。「優しい子。どの投手も救ってくれるので、信頼がある」と糸瀬直輝監督は言う。

 意気込んで臨んだ九回の打席だったが、打ち損じた打球は投手前に。一塁まで全力で走り、最後の夏は終わった。「1点の取り方の違い。向こうが上だった」。それでも「できるだけのことはやった」と胸を張った。(岡田昇)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。