今春の県大会を制した「公立の星」春日。その投手陣の一角を担うのが、最速138キロの球威で押す右腕・久保田温太郎(3年)だ。

 昨秋、久保田は、エースナンバーの背番号1に手が届くところまで来た、と感じていた。秋の県大会では、準決勝の飯塚戦で負けるまで、5試合で先発を任されていた。

 だが、秋の大会直後、投球練習中に右肩に鋭い痛みが走った。軟式野球出身で、重い硬式球で肩を壊した1年の時の「関節唇損傷」の再発らしい。「治ったと思っていたのにどうして」「夏に間に合わないかも」。不安と焦りが募った。

 昨冬から今春にかけてボールを投げられないなか、病院で教わったストレッチの仕方や診察の記録とともに、「どこに逃がせばいいか分からない」気持ちをノートに書き込むようになった。

 今年3月にはこう書いた。《復帰したときに、自分の体を自由に動かせるかが大切だ!》。《下半身強化、フォームを固める、全体的な筋力UP》と三つの課題も挙げた。

 炎症がおさまり、投球練習を再開した4月中旬、八女高校との練習試合で3イニングだけ登板した。制球が定まらず、結果は四死球2、失点1。《上下のバランスがおかしい》と反省しつつ、より筆圧を強めて《焦らず、一つ一つ課題をつぶしていく!》と書いた。

 最後の夏を控え、ライバルの前田歩三雄(ふみお)(同)がチームの中核を担う。前田は、春の大会で強豪・九州国際大付を1失点に抑え、完投。久保田は「一緒に競い合ってきたはずだった」ライバルの活躍に焦る気持ちをこらえ、その背中を負けじと追う。

 6月、久保田は練習試合で先発に復帰。課題の制球力も改善しつつある。ただ、周りにはまだ「(けがの原因になった)肩に力を入れすぎ」と言われる。制球が崩れると、《肩が痛くてもそのせいにしてはいけない》とも書いてしまう。

 それでも、発症時のメモを見返すと、着実に前に進んでいる自分が見え、少しだけ落ち着く。治療のことばかりだったページは、また投手としての反省や分析で埋まるようになっている。=敬称略(太田悠斗)

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