阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で3月にあった第96回選抜高校野球大会で、同県丹波篠山市職員の辻川貴志さん(46)が審判員として「初出場」した。計3試合で審判を務め、「これまで学んできた成果を発揮できて、やり切った」と振り返った。
辻川さんは小学3年から野球を始め、篠山産業高校野球部では3年の夏に外野手としてベンチ入りした。だがレギュラーではなく、公式戦では守備機会はあったが打席に立てなかった。最後の夏、兵庫大会3回戦で延長戦の末、サヨナラ負けをした。「本気で甲子園出場を目指していたので、悔しくてみんなで泣いた」
高校卒業後に旧西紀町役場の職員となり、2005年、審判員をしていた職場の先輩に誘われ、県高野連の審判員になった。「高校時代は補欠だったので、高校野球への思いをあきらめられず、引き受けた」。月1回ほどの講習会や練習試合で、打球が当たって腕に青あざをつくりながらも、技術を磨いた。秋の近畿大会の決勝で球審を任されるまでになった。
これまでの19年間の実績や姿勢が県高野連に高く評価され、今春の選抜大会へ派遣された。
同大会では計3試合で一塁、二塁、三塁の塁審をそれぞれ務めた。「正確な判定をしようと責任を感じて、緊張しました」
審判員のやりがいは、「限られた時間の中で全力を尽くす高校球児を一番近い場所から、ジャッジを通して応援できること」だと感じる。「高校時代に憧れてきた甲子園に、30年近くが経ち、ようやく立つことができた。夢はあきらめなければ、いつか必ずかなうと子どもたちへ伝えたいです」
今夏の兵庫大会も、審判員としてグラウンドに立ち、球児の近くからエールを送り続ける。(森直由)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。