7月6日に開幕する第106回全国高校野球選手権滋賀大会に臨む長浜北(滋賀県長浜市)の野球部に、10年以上前から野球用品を贈り続けている人がいる。「タイガーマスク」と呼ばれて先輩から後輩へと引き継がれてきたが、いまだに正体は「不明」。野球部は感謝の気持ちを伝えたいと望み続けているが、果たして、どんな人なのだろうか――。

 長浜北は、現在の場所にあった旧長浜と、違う場所にあった旧長浜北が統合し2016年に開校した。

バックネット裏に置かれ続ける贈り物

 ことの始まりは13年5月。旧長浜の駐輪場にバットなどが入った袋が置かれていた。中には新品のバットやキャッチャーミット。以来、バットのほかグラブや手袋などの入った袋が、グラウンドのバックネット裏に置かれ続けた。新校舎建設に伴って旧長浜北を使用していた時期も途切れなかった。

 最初の3回は警察に届け出たが、以降は「タイガーマスクからの贈り物」として受け取っている。贈り物は年に2、3回あり、今年3月で31回を数えた。バットの本数は計119本にもなる。

 「感謝の気持ちを伝えたい」。代々の野球部員はそう思ってきた。バックネット裏にある掲示板に、タイガーマスクに宛てたメッセージを貼ったこともあった。

 安本利久監督(57)も「お礼が言いたい」という思いが強い。13年当時は旧長浜の野球部長で、贈り物を受け取ることに最初から関わってきた。部員たちには「そばで見て下さっている方がいる」と伝え続けてきた。

「タイガーマスク」は長浜在住の初老の方?

 朝日新聞も度々報じてきたタイガーマスクはどんな人なのか。安本監督は最初のころ、袋に記されたスポーツ用品店に問い合わせた。個人情報は教えてくれなかったが、「長浜在住の初老の方」ということはわかった。

 バックネット裏には出入り口がある。タイガーマスクは夜間から早朝の間に、ここから入って贈り物を置いているようだ。

 記者は、近くで50年以上暮らす住民や元自治会長、13年当時の主将らに取材。少しでも端緒がつかめればと思ったが、「心当たりがない」などということで断念した。

 部員たちは、タイガーマスクから贈られた野球用品で練習に励む。女子部員の小澤奈月選手(2年)はバットなどを愛用しているといい「大切に使っている。チームとしてもありがたい」。

 長浜北は10日の初戦で北大津と対戦する。「甲子園をめざしている。試合で結果を出して恩返しがしたい」と田中煌将(おうすけ)主将(3年)。タイガーマスクへの感謝の気持ちを胸に臨む。(仲程雄平)

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