(第106回全国高校野球選手権新潟大会)

 いちいち目立つ選手だった。6月9日にあった練習試合での万代・早川勇生選手(3年)だ。この日は病み上がり。ややだみ声だったが、声を出し続けていた。

 一球ごとに味方を鼓舞する。守備位置の一塁からは投手が投げるたび、「いいピッチャーだなあ」とか。ベンチからは仲間が空振りしても、「いいよ、振れてるよ」とか。声は途切れなかった。

 打撃でも目立つ。ぼてぼてのあたりでも一塁まで全力疾走。ほぼヘルメットが外れ、やや長めのサラサラ髪があらわになった。その姿に立川司監督は「WBCの時の大谷翔平選手のよう」と笑う。

 中学から野球を始めた。だが、打撃はダメで、守備ではエラーばかり。「何もできないなら声を出そう」と考えた。「声を出し続けるのは当たり前というか、もう癖ですね」と言う。

 高校に入ってからはずっと他校と連合チームを組んできた。「練習は別々で、チームが一つになるのが難しかった」。だが今春、1年生10人が入部。3年ぶりに単独で新潟大会に出場する。

 メンバーが充実した今、「新しい時代を創(つく)る」が部のスローガンだ。そのためには「全員が全力で前向きに挑戦し続ける」とうたう。「いつも全力で前向きな勇生はムードメーカー。スローガンを体現している」と立川監督は話す。

 新潟大会での目標は8強進出だと早川選手は言う。2年前の春の県大会で万代を含む連合は16強まで勝ち上がった。だから8強にも手が届くと考えている。「自分たちの野球をやれば、かなえられるはず」。真顔だった。

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