第106回全国高校野球選手権熊本大会が6日、開幕します。少子化などの影響で全国的に野球部員の数が減っている中、厳しい環境下でも白球を追い続ける部員らの姿を3回に分けて描きます。
今回は最終回。3人の顧問教諭が6人の選手と一緒にプレーしながら指導する高校の話です。
「いまのよかったやろ」「もう1本いきましょう」。放課後の鹿本商工の野球部グラウンドに、ノックを受ける3人の元気な声が響いた。
見ると、2人は顧問教諭で選手は1人。ノックバットを握っているのも選手だった。
選手6人の硬式野球部に3人の顧問教諭。いずれも高校野球経験者だ。指導や監督に専念するのではなく、練習のほとんどを、選手たちと一緒に汗を流す時間に使う。
選手そこのけと言わんばかりに打撃練習で鋭い打球を飛ばしたり、捕手同士で本塁から二塁への送球を勝負したり。「教える側と教わる側」ではなく、同じプレーヤーとして野球を楽しんでいた。
顧問の1人で監督を務める大森淳弥教諭(40)は、「こんなおじさんでもここまで動けるんだから、君らはもっとやれるだろうと見せつけています」と笑う。その奥にあるのは「高校でも、その先の人生でも野球を楽しんで欲しい」という思いだ。
選手6人で出来る練習は限られてくる。通常の守備位置につけてのノックさえ難しく、メニューは個別練習にかたよりがちだ。そこに、いずれも高校時代は硬式野球部員だった顧問3人が加わることで、選手たちも刺激を受けている。
淵脇元気教諭(30)と二塁送球を競い合った1年生捕手は、みるみる送球の速さと正確さを高めていった。村端勇輝教諭(28)から打撃の指導を受けた選手は、お手本を見せてもらってはバットを振り込み、狙いの打球に近づけた。
小学生のときから野球を続けてきた主将の上田輝龍さん(3年)は「いまが一番楽しい」と話す。人数は限られているが、自分の課題に合わせた練習を集中して出来る。それに、元4番の長距離打者や元1番のアベレージヒッターといった、それぞれタイプの違う顧問の先生たちにじっくり教えを受けることで成長が実感できるという。
「もっと色々教わって、もっとうまくなりたい。時間が足りません」。この夏は熊本高専熊本、菊池農との連合チームで出場する。1勝でも多く挙げ、先生たちとの野球の日々を長くしたいと願っている。(吉田啓)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。