雲はわき、光あふれて――。大会歌そのままの夏空が熊本市の上空に広がった6日、第106回全国高校野球選手権熊本大会が開幕した。参加60校52チームが甲子園行きの切符を勝ち取ろうと、22日まで熱戦を繰り広げる。
「イチ、イチ、イチ、ニー」。開会式では、参加全チームのベンチ入りした選手が元気な掛け声をあげて、リブワーク藤崎台球場(熊本市中央区)のグラウンドをぐるりと行進した。ここ4年、コロナ禍や雨にたたられ、こうした形での行進は5年ぶりとなった。
昨夏の優勝校、東海大熊本星翔の渡嘉敷篤弘主将(3年)が優勝旗を返還し、記念の盾を受け取った。
熊本県高野連の鶴山幸樹会長は、1月に起きた能登半島地震や8年前の熊本地震、4年前の熊本豪雨に触れ「他県で苦しい思いをしている高校球児にも思いを寄せ、いまこの球場にいることが決して当たり前ではなく、多くの方の支えでいることが出来るのだということを忘れないで欲しい」と呼びかけた。
続いて「この学校で野球部に入り、仲間に会えて良かった、と振り返られるような大会になれば主催者として、これ以上うれしいことはありません」とエールを送った。
「1人では、たどり着くことが出来なかった。この日を多くの人の支えで迎えられたことに感謝します」。九州学院の紫垣俊吾主将(3年)は選手宣誓で「絶対に盛り込みたい」と思っていた、仲間や指導者、家族への感謝の気持ちを述べた。
1人の選手として、主将として、プレーがうまくいかなかったときや、チームをうまく率いることが出来ていないと感じたとき、何度も心が折れそうになった。そのたびにチームメートをはじめとした周囲の人々が支えてくれて、この夏の大会を迎えられた喜びを言葉にした。
「私たち高校球児のプレーで多くの人を笑顔にして、勇気を与えられるよう、心を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして」精いっぱいプレーすることを誓った。
宣誓の内容は仲間や先生たちと相談しながら考え、5日前に完成した。練習の終わりや自宅の風呂の中、母の前などで1日10回は練習したという。大きな声で、よどみなく宣誓を終えて「100点満点でした」と笑顔を浮かべた。(吉田啓)
開幕試合の始球式の投手は、県立第一高校の野球部マネジャー朝倉沙月さん(3年)が務めた。チームメートらが見守る中、投球は捕手にノーバウンドで届き、歓声がわいた。
兄2人が野球をしていて、幼いころから野球を見て育った。兄の野球部のマネジャーが楽しそうに見え、高校入学後野球部へ。マネジャーは学年1人だったが、「部員に助けてもらい、元気をもらいました」。
近くの小学校などで兄とキャッチボールをするなどしてこの日を迎えた。「思ったよりリラックスして投げられた」と朝倉さん。評価をたずねると「もうちょっと低めに投げたかったけど、届いたので80点」と答えた。
8日に迎える小国との初戦では、朝倉さんは記録員としてベンチ入りする。「支えてくださった方々のために、内容で誇れる試合をしたい」と抱負を語った。(築島稔)
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