(8日、第106回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 大崎12―7目黒)

 帽子を脱ぎ、つばの裏に書かれた文字をマウンドでそっと見た。「一球入魂」。絶対に最後まで投げきる。目黒の是沢龍佑(3年)は気合を入れ直した。そして、笑顔を見せた。

 五回から3番手としてマウンドに上がったが、七回に5点を奪われ、チームメートが駆けつけた。笑顔で声を掛け合った。「いいぞ!」

 どうしてもマウンドに立ちたかった。これまで、同級生のエース小余塚柊(こよづかしゅう)と投手陣の軸を担ってきた。だが5月、練習中に打球が左目に当たり、眼窩底(がんかてい)を骨折。失明の恐れもあると言われ、練習に参加できなくなった。夏の大会が近づくにつれ、焦りが募った。

 首から上に力をかけないよう筋トレする一方、チームを励まし続けた。医師の許可が出て打撃練習ができたのは6月。夏の大会に、何とか間に合った。

 この日、先発した小余塚は直球が大崎打線に捕まり、序盤から大量得点を許した。2点差の五回からマウンドに立った是沢は「ピッチャーはチームの要。常に笑顔でいたい」と、失点しても冷静さを失わなかった。九回1死満塁のピンチも、三振と二ゴロでゼロに抑えた。

 試合後、加藤春彦監督は「強い精神力がある。誰よりも投げたいという気持ちが強い」とたたえた。試合中、笑顔だった是沢は3年間を振り返ると言葉を詰まらせた。「ここで終わりにしたくなかった」=神宮(石川瀬里)

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