(8日、第106回全国高校野球選手権滋賀大会1回戦 虎姫9―5石山)

 8点を追う六回裏。1死一、二塁の好機で石山の丹波祥雅(しょうが)選手(3年)が代打に送られた。それは特別な打席だった。

 2年前にひじをけがした。復帰後の昨年3月には、練習試合でひざの前十字靱帯(じんたい)を断裂。手術をして約1カ月入院した。

 リハビリの日々だった。走れるようになったのは9月ごろ、バッティングができるようになったのは今年1月ごろ。医師から試合出場の許可が出たのは6月のことだった。

 これまでの県大会でもベンチ入りしたが、座っているだけだった。だが、ベンチには欠かせない選手で、「チームを盛り上げてくれる存在」と阪口陽(ひなた)主将(3年)。

 この日の代打には、藤居秀監督が「流れを変えてほしい」と期待を込めた。

 打席に立った丹波選手は6球粘った。スタンドからは「かっとばせ、丹波!」の声援が続いた。

 惜しくもライトフライに打ち取られたが、けがを乗り越えてたどり着いた代打だから、よりいっそう感慨深い。

 「でかい応援がうれしかった。最後に出られてよかった」

 今後は進学をめざして勉強に励む。(仲程雄平)

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