(9日、第106回全国高校野球選手権福岡大会3回戦 門司学園1―8常磐)

 一回表の守りを終えると、門司学園の捕手、古財翼選手(3年)はうつむいてベンチに戻った。いきなり5失点。3四死球と苦しむ投手を落ち着かせる役目なのに、自分の悪送球でも点を奪われた。うなだれていると、左翼手の稲益宝彦(たかひこ)選手(3年)が笑顔で声をかけてくれた。「落ち着け、焦りすぎや」

 2人は幼なじみで、野球を始めた小学3年からずっと同じチーム。しっかり者で周りに気を配る古財選手と、マイペースで周囲をなごませる稲益選手。性格は違うが、気が合う。悩みや恋の話も打ち明けあってきた。

 高校になると、「一緒に試合に出よう」が合言葉に。2年の夏、古財選手が出場すると、秋には稲益選手も外野のレギュラーに。目標は、福岡ベスト32に変わった。130以上のチームが出場する福岡では簡単ではない。全体練習の前や後、2人でティー打撃などで鍛えた。

 今春、古財選手が右手首を骨折。何とか夏に間に合ったが、この日のプレーは本調子とはほど遠い。「頭が真っ白」になりかけたが、稲益選手が何度も声をかけてくれた。少しずつ、冷静さを取り戻し、四回には二盗を阻む好プレー。持ち味の的確な指示も随所にみせた。

 「助かったよ、支えてくれて」。試合後、古財選手が目を潤ませながら伝えると、稲益選手は照れ笑いでかえした。「また一緒にキャッチボールしような」。卒業後、2人は別々の大学に進む予定だ。(太田悠斗)

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