(10日、第106回全国高校野球選手権西東京大会2回戦 日大三6―0私武蔵)

 私武蔵の先発、尾花優斗(3年)は腹をくくってマウンドにあがっていた。相手は昨夏の覇者で強打の日大三。「絶対に怖がらない。守備を信じて、打たせるイメージで」

 相手が日大三に決まって以降、チームで対策を練った。出した答えは、「外野フライでアウトを重ねる」。今春からは打球が飛びにくい「低反発バット」が導入された。伸びのある尾花の直球で押し込めば、外野フライを重ねられると考えた。

 迎えた決戦の日。序盤、対策は想像していた以上にはまった。尾花が練習通り、次々と高めに直球を投げ込むと、日大三の選手は強振。心地よい金属音が響くものの、打球は外野の頭を超えなかった。五回までに12個ものフライアウトを奪い、被安打2で無失点。思い描いた展開だった。

 ただ、日大三の対応力も想像以上だった。打順が三巡目に入った六回以降、「高めに対応され始めた」。六回に3本の長打を浴びて2点を失った。七回、四死球から失点すると、尾花はマウンドを降りた。

 試合後、尾花の表情は晴れやかだった。直球の最速は130キロに届くかどうか。それなのに、日大三を途中まで翻弄(ほんろう)できたからだ。「すごい打者たちに対し、一番良い投球ができて、最高だった」

 杉山晶人監督も「尾花は徹底して外野フライを打たせてくれた。ナイスピッチング」と、エースをねぎらった。=スリーボンド上柚木(吉村駿)

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