智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
今春の選抜大会には田辺と耐久の公立2校が出場するなど力のあるチームが多く、熱戦が繰り広げられそうです。
その中で軸になるのは春の県大会で優勝、近畿大会でも準優勝した智弁和歌山。昨夏は初戦で敗れ、7年連続優勝(2020年の独自大会を含む)を逃しましたが、中西琉輝矢(るきや)選手(3年)や近畿大会でも好投した渡辺颯人選手(2年)ら投手陣が安定していて、頭一つ抜けている感じがします。「今年こそは」という強い思いを持って挑むことでしょう。ただそれがプレッシャーになってしまう可能性もあります。
対抗となるのが、この春に甲子園を経験した田辺と耐久、昨年優勝の市和歌山、春の県大会で準優勝した和歌山東の4校。春の決勝では1―6で敗れた和歌山東ですが、この試合はエースの前芝翔太選手(3年)は投げませんでした。「打倒智弁」に照準を絞った米原寿秀監督の作戦かもしれません。
このほか好投手がいる日高中津、自主性のある選手らでまとまりのある日高、中学校の軟式野球部を長い間指導してきた産屋敷秀信監督が就任3年目となる近大新宮の戦いも注目です。
2年連続で4強入りしている和歌山南陵は学校の事情で3年生のみ10人で挑みますが、それだけに気持ち的にも高まっていて、大きな力を発揮してくれるかもしれません。
昨夏、開幕戦で勝利し、快進撃で決勝まで進んだ和歌山北は今大会も開幕戦。昨年の勢いが続いているか楽しみです。
今大会は好投手が多い印象です。
2年前に智弁和歌山との試合に先発し好投した田辺の寺西邦右選手(3年)は、順調に成長して甲子園でも良い投球をしていました。どのチームも打ち崩すのはなかなか難しいでしょう。ただ、試合を重ねると体力的にも苦労するのではと思います。
耐久の冷水孝輔選手(3年)は縦の変化球にいいものがあります。昨秋の近畿大会ではこれが決まっていました。直球にも力がありますが、変化球のコントロールが試合を左右するかもしれません。
1年生のときから投打にわたって活躍してきた日高中津の市木栄勇選手(3年)は経験も豊富で、持ち味をしっかり出すことができたら、なかなか打たれることはないでしょう。
頼れる4番打者の誕生が見もの
一方で、昨年は数人いた大きな当たりが期待できる「4番打者」があまり見当たりません。新基準の低反発金属バットが影響しているのでしょうか。
そういった中で好打者をあげると、昨秋の県大会で満塁本塁打を放った田辺の山本陣世選手(3年)や1年の夏から活躍している和歌山東の谷村剛選手(3年)らが注目されます。
また選抜に出場する直前の耐久と3月に練習試合で対戦し、3打席連続本塁打を放った智弁和歌山の花田悠月選手(3年)が「頼れる4番」に成長しているか楽しみです。
さきほども触れた新基準のバットですが、「飛ばない」という声も聞きますが木製バットと同じように芯でとらえると長打も出ます。
私が監督のころはしっかりミートする感覚を身につけるため竹製のバットで練習していました。各チーム、大会までにどのくらい対応できるかがカギになります。
今年も暑い夏になりそうです。今大会から熱中症対策として試合中に「クーリングタイム」が設けられます。五回終了後の10分ということですが、どのように使うかが試合再開後の選手の動きを左右します。
私は監督時代、選手に暑さに慣れてもらおうと5月からグラウンドコートを着せてノックをしていましたがそのころより、ずいぶん暑くなっているように思います。各チームの監督がどう対応するかも興味があります。
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和歌山大会期間中に智弁和歌山前監督・高嶋仁さんの観戦記を随時掲載します。((聞き手・勝部真一))
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