この夏、62チームの頂点に立つのはどこか――。第106回全国高校野球選手権福島大会の開会式が12日、福島市の県営あづま球場で開かれた。昼前から強い雨に見舞われ開幕試合は中止となり、翌日に順延。13日は5球場で計11試合が予定されている。

 午前10時、福島大会の始まりを告げる花火が打ち上がると、球場は大きな歓声に包まれた。日差しがなく気温も30度を下回る中を、連合5チームを含む68校62チームの選手らは手拍子に合わせ元気よく行進した。振り上げる手の高さをそろえるチーム、「ワッショイ」とユニークな掛け声をあげるチーム、それぞれが特別な思いを持って芝を踏みしめた。

 優勝旗を返還した昨年覇者の聖光学院の佐藤羅天(らま)主将(3年)は「(優勝旗は)歴代優勝校の思いが結集して重かった」と語り、「他チームは『打倒聖光』で向かってくると思う。エネルギーではね返し、福島のてっぺんを目指す」と気を引き締めた。

 開会式では、大月規義・朝日新聞福島総局長が「目標を高く持ち、福島の地を勝ち上がって聖地と言われる甲子園での全国制覇を目指してください」と激励した。

 開会式後には福島東―小高産業技術の開幕試合が予定されていたが天気が急変。雨天中止となり、13日の福島県営あづま球場での第3試合に順延された。

 2年連続の開幕試合に臨むはずだった福島東の庄司幹汰主将(3年)は「やりたい気持ちがあったけどしょうがない。日程が変わっても自分たちの野球ができるよう切り替える」。小高産業技術は昨秋の県大会で1、2回戦ともに継続試合を経験した。エースでもある草野大輝主将(3年)は「順延も貴重な経験。今日以上に強い気持ちを持って一球一球を大事に、明日を最後の日にしないようにしたい」と意気込んだ。

 この日は、高校野球の発展に尽くした指導者に贈られる「育成功労賞」を受賞した服部芳裕さん(65)が始球式に臨んだ。双葉時代の教え子でもある長男の芳彬さん(37)とそろって、原発事故で休校中の双葉のユニホーム姿で登場した。(酒本友紀子)

野球人口減少、だからこそ……

 「今、野球人口減少という大きな問題を抱えています」

 選手宣誓した田村の国分紘也主将(3年)が宣誓にどうしても入れたかった内容だ。

 高校1年生の冬、地元・福島県三春町などの小学生を相手に野球教室を開いた。教える側で参加した国分主将は、子どもたちが楽しそうにしている姿を見て、「野球っていいな」と思った。

 宣誓の内容は1人で考えた。野球ができることへの感謝、そして野球人口が減っていること――。

 今大会に参加する選手たちに、こう呼びかけた。「私たちができることは大好きな野球を笑顔でプレーし、勇気と感動を与えることです。私たちのプレーで盛り上げましょう」

 宣誓を終えると、観客から大きな拍手が送られた。「緊張したけど、(100点)満点です」。笑顔がはじけた。(滝口信之)

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