白球が頭上を越えていく。三回裏、敬和学園の左翼手、南場惺(さとる)(3年)は深く守っていなかったことを悔やんだ。同時に「コールド負けになってしまう」と焦った。相手に10点目が入った。

 敬和学園は新発田中央の投手陣から安打を1本も放てなかった。反対に17安打を浴びて13失点。五回コールド負けに終わった。

 部員は11人しかいない。3年生は南場を含めて4人だけ。だが、上級生がいなくなった1年生の秋から部を守り、さらに1人も欠けることがなかった4人の結束は固い。

 南場は部の「おにぎり係」だ。選手の体を作ろうと堀越俊継監督が始め、昨冬からは南場が握るようになった。昼休みに4合半の米を洗い、炊飯器のスイッチを入れる。練習が始まる前に小さめを20個ほど握り、仲間にふるまう。「うんめ」と満面の笑みを見せる石垣璃久(3年)を筆頭に、少ない部員みんなが楽しみにしていた。

 南場たちの引退で後輩たちは秋の県大会に連合チームで臨むことになる。「おにぎり係は引退しません。後輩が勝てる体を作れるように、卒業するまで握ります」。優しい先輩の顔をしていた。(鈴木剛志)

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