(14日、第106回全国高校野球選手権大阪大会2回戦 枚方なぎさ10―8西野田工科) 

 相手校の校歌を聞いているとき、西野田工科のエース、渡辺政宗主将(3年)の頭に浮かんだのは「あのとき辞めなくてよかった」という思いだった。

 1年の秋、練習試合で靴下を忘れた。怒られるのが怖くて周りに言い出せなかった。

 試合中にばれて、監督や先輩に叱られた。「何してるんやろ」。恥ずかしさと情けなさで、辞めたいと周囲にこぼした。先輩たちの説得で、思いとどまった。

 そんな選手が、新チームで主将になった。「気持ちを強く持つ」と誓った。

 14日の初戦、先発すると六回途中まで粘り強く投げた。マウンドを譲ってからは、捕手として2年生投手を懸命にリードした。

 試合後、涙は見せず「仲間にはありがとうと言いたい」。最後まで気丈に振る舞った。(田中祐也)

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