(21日、第106回全国高校野球選手権愛知大会4回戦 星城6―5西春)

 勝利まであとアウト三つだった。3点を勝ち越した直後の延長十三回、西春のエース芦谷輝大選手(3年)がマウンドへ駆けた。球速差約30キロ。緩急のある投球で初回から前の回までフライアウトを20個取っていた。

 だが、十三回は「正直、満身創痍(そうい)で、気力で投げていた」という。星城の1人目をレフトフライに打ち取ったが、後続の適時三塁打で2失点。さらに死球、2点適時二塁打で、サヨナラ負け。

 中学時代から軟投派の投手だった。身長169センチ。小柄な体格で活躍するため、指導者の助言から導いた答えが「緩急」だった。80キロ台のカーブ、チェンジアップを磨いてきた。

 相手の星城は、春の県大会でコールドで敗れた因縁の相手だ。この時、芦谷選手は7失点。

 だが、倉見徳人監督は「今日の芦谷の出来ならと、腹をくくって任せた」とマウンドへ送り出した。勝てば翌日の5回戦は先発させない約束もしていた。

 約3時間50分に及んだ熱闘。「試合も、入部から引退までもあっという間でした」。試合直後は部員のすすり泣く声に、自らも涙したという芦谷選手。涙の後には笑みをこぼした。(渡辺杏果)

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