(21日、第106回全国高校野球選手権千葉大会5回戦 専大松戸1―5市船橋)

 1点リードされた三回裏無死一、三塁のピンチ。専大松戸のエース梅沢翔大(3年)が救援に入った。犠飛で1点を許すも、後続を抑えた。

 市船橋のエース工藤将祐(3年)と投手戦を繰り広げる。

 2点を追う七回表に、工藤の4四球などで1点を返す。

 その裏の守備。「自分は打てないので、野手に勢いをつける投球で良い流れを持ってくる」。先頭を内野ゴロに打ち取り、続く打者を空振りの三振に抑えた。

 迎えた3人目。梅沢はツーストライクに追い込んで最後に変化球で抑えようとすると、捕手の小林勇輝(3年)が直球のサインを出した。「キャッチャーを信じて全力で腕を振る」。外角に投じた渾身(こんしん)のストレートに打者のバットが空を切る。空振り三振に仕留めた。自己最速に並ぶ149キロを記録した。

 梅沢は左足の小指を骨折し、春の関東大会を欠場した。けがで野球ができなかったとき、1学年上の先輩だった平野大地さん(専修大)のことが頭をよぎった。「平野さんは夏に向けてやってきたのに、全てをかけられなかった」

 平野さんは昨春の選抜8強入りの立役者で、最速151キロ右腕として注目されたが、故障で最後の夏は思うような活躍ができなかった。

 「直球だけでなく、球種も、立ち振る舞いも、気持ちの表現も、全てにおいて一流。憧れだった」。追い抜きたい相手でもあった。「平野さんは後輩に背中を見せるためにやっていたわけではないと思う。(平野さんが)自分のために頑張る姿に憧れた」

 「夏に間に合うのか」。憧れの先輩と重ね合わせ不安を抱える梅沢を周囲が励ましてくれた。回復に向け、リハビリを始めた。まずは歩くことから。最初は外野を半分歩くだけで疲れたが、日に日に痛みもとれた。

 違和感は少し残るものの、夏に全てをかける準備は整った。

 頂に立つはずだった。最後は守備のミスが重なり、3点を取られた。打線もつながらず、専大松戸の夏が終わった。それでも、思いっきり腕を振り、全力投球できた。八回には150キロを記録した。ピンチも何度か乗り切った。「最後に自分の力を出し切れた。やってきたことは間違いなかったと言える」

 まだ理想とする投手にはなれていない。「投手に関わること全てにこだわってきた。最大の目標にはまだ途中なので、頑張っていきたい」。さらなる成長を求める姿勢は、引き継がれていく。=県(杉江隼)

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