(24日、第106回全国高校野球選手権佐賀大会決勝 鳥栖工1―2有田工)

 三回裏1死三塁のピンチで対峙(たいじ)したのは、準決勝までで打率5割と好調の有田工4番、山口大誠選手(2年)だった。鳥栖工のエース松延響投手(2年)はギアを上げた。

 「筋肉痛があってスピードは出ていなかった」という右腕を気持ちで振る。1球目140キロ。2球目142キロ。3球目は自己最速にあと1キロと迫る144キロの高めの速球で、スクイズを狙った山口選手もボールに当てるだけで精いっぱいだった。その後も140キロ台の直球で攻め、最後は投飛に仕留めた。そしてこの回、無失点で切り抜けた。

 だが五回。同じく1死三塁の場面を作られ、捕逸、四球、盗塁に安打で2失点。山口選手に打たれた適時打は「ストレートが簡単に行き過ぎた」と悔やんだ。この2失点目が決勝点となった。

 昨夏、甲子園でもバッテリーを組んだ兄晶音(あぎと)さんからは試合前、「あと1試合。頑張れ」とLINEで励まされていた。連覇し、兄ら多くの人に恩返ししようと思っていた。甲子園を逃した閉会式後、ベンチの一番奥でうつむいた。

 今大会5試合を投げ、4試合で完投し、失点は6。気持ちを落ち着かせると、来夏に向け「ピンチでも直球、変化球を投げ分け、堂々とした投球ができるようになりたい」と語った。

 「1年のときから目いっぱい投げてきて、3年生でもないのに、自分がチームを勝たせないと、と思っている。周囲の注目度も高い。責任感の強い子だから、よけいきつかっただろう」。大坪慎一監督は、2年生エースをこうねぎらった。(野上隆生)

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