(24日、第106回全国高校野球選手権岡山大会準々決勝 関西6―3岡山東商)

 「来いやー!」。タイブレークで3点を追う十回裏2死二、三塁。打席に立った4番・豊島瑛太(3年)は闘志をむき出しにした。

 直前、主将の今井仁哉(同)から「努力は絶対裏切らない。2年半やってきたことを出す場所がきたぞ」と声をかけられていた。

 「いけー! お前なら行けるぞ」。ベンチからの今井の鼓舞を背に、狙い球を直球にしぼった。八回裏、次打者の相野康介(同)の2点本塁打につなぐ二塁打を放った球だった。

 3球目をフルスイング。しかし打球は遊ゴロに。頭から一塁に飛び込んだが、間に合わず最後の打者になった。

 今井は今年3月、練習中、右ひざに大けがを負った。一塁手で4番だったが、夏の大会への出場が絶たれた。「今井を甲子園へ連れていく」がチームの「合言葉」になった。

 大黒柱の今井に代わり、一塁手と4番を務めたのが豊島だった。「自分に務まるのか」。代打が活躍の中心だった豊島にとって、重圧と戦う大会でもあった。

 この日、豊島は2安打と四球で3度出塁し、4番の役目を果たした。常に声を張り上げ、味方の背中を押した。

 「甲子園に連れて行けなくてごめんな」。試合後、今井に声をかけた。返ってきたのは「最後を任せられて、お前でよかった」。(北村浩貴)

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