(25日、第106回全国高校野球選手権岩手大会決勝 盛岡大付3―4花巻東)
追いついた直後の八回表、2死一塁。右越えの長打を打たれ、一塁走者が本塁に走ってくる。「これは刺せる」。返球がミットに収まり、盛岡大付の坂田宗次朗捕手(3年)は思い切り腕を伸ばした。
しかし、滑り込んだ走者の手がわずかに早く、セーフ。勝ち越された。「防げた1点だったかも」。悔しさがにじんで、うつむいて球の砂を払った。
でもすぐに表情をやわらげ、マウンドで奮闘する1学年下の若林真大投手(2年)に声をかけた。「気を落とすな。次の打者を抑えよう」。ゴロに打ち取って三塁走者をかえさず、この回1失点に抑えた。
今春まで主将も兼ねていたが、チームをまとめきれず、捕手に専念することに。関口清治監督から「一人前の捕手になれよ」と声をかけられた。
そんな時、今春の県大会決勝で花巻東と対戦した。バッテリーの息があわず無駄な四球が失点につながり敗退。「自分にはまだ足りない部分がある」。そう実感させられた。
「チームを引っ張る捕手になりたい」。そこから試合やブルペン、寮でも積極的に投手陣に声をかけた。マウンドに駆けよって投手の緊張をほぐすことを意識すると、四死球がどんどん減ってきた。
迎えた夏。ここまで4試合を勝ち抜き、花巻東と再戦となった。「俺が強気でいけば、若林も気持ちが奮い立つ」。マウンドやベンチで投手の背中をたたいて声をかけ、攻めた配球で抑え続けた。だが終盤につかまった。
九回裏、仲間がつないで1点差まで迫る姿に、ベンチで涙が止まらなかった。「勝ちきれず悔しい。でも、捕手として打者を抑えた喜びで本当に楽しかった」
大学でも野球を続けるつもりだ。「一人前の捕手は、まだまだこれからです」(松尾葉奈)
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