(25日、第106回全国高校野球選手権広島大会準決勝 広島商6―3尾道)
打席で思わず叫んでしまった。
「どうしてもランナーを返したくて、気持ちが出ました」
広島商の4番・米田歩生にとって、それだけ欲しかった追加点だった。
4―2で迎えた七回。1死満塁で打席が回ってきた。2球で追い込まれたが粘る。3球続けてファウルでカットした後の8球目。浮いた速球を捉え、左前適時打にした。
チームは六回に2点を勝ち越していたが、「2点じゃ尾道打線が怖かったので、追加点を取りたかった」。
その言葉の裏には理由がある。昨夏の広島大会決勝、2年生ながら6番捕手で先発したが、広陵に2―3で敗戦。新チームになってからは、昨秋の県大会1回戦で尾道に4―5、今春は同2回戦で崇徳に3―4で敗れた。接戦をことごとく落としてきた。
「秋と春は打線が援護できなくて勝てなかった。しっかり点を取ることをベンチで話してきた」
苦い敗戦から、少しでも多く得点し、投手を楽にさせたい――。4番の、そして正捕手としての意地が詰まった一打だった。
荒谷監督も「あそこ(昨秋の敗戦)から新チームが始まっているんで、うちは」。米田については、当時の悔しさを特に強く持っている1人だとして、「よく打ってくれた」と声を詰まらせながら言葉を紡いだ。
米田はこれで今夏は6試合で14打点。攻守でチームを引っ張る。甲子園球場に移って初めて開かれた第10回全国中等学校優勝野球大会で優勝した古豪は、100周年を迎えた甲子園の舞台まで、あと1つ勝てば届く。だが慢心はない。「決勝に行っても、負けたら意味ない。決勝で勝って甲子園を決めないとダメだと思うんで、しっかり、勝ちにこだわってやりたい」=ぶんちゃんしまなみ(大坂尚子)
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