学校の働き方改革で変革期を迎えている中学校の部活動。教員や保護者だけでは手が回らない“部活”を「他の人たちに手伝ってもらう」。そんな“部活動の外部委託”を実践している、あるサッカー部を取材した。(RBC NEWS Link 「スポーツのミライ」7月26日放送回)
休日の、うるま市立具志川中学校。6月末、県中学総体を控えていたサッカー部は、腕試しのリーグ戦に向かった。
「3台に分かれて出発します、3年生はマイクロバスの方に…」
朝6時半には集合し、会場の北谷町へ。移動車を運転するのは、学校の顧問でも保護者でもない。
▽運転する大嶺亮一さん
「ちょっと社会貢献したいという思いで」
送迎を担っていたのは、部活動を支援する一般社団法人「リタサポート」のスタッフ。リタサポートが入るまでは、試合の送迎は当然のように保護者が担っていた。
▽保護者
「試合の1時間半前に会場に集合というところを、(今は)試合の時間に合わせて父母は応援だけに来る。朝だけで2時間くらいは、時間が浮いたような感じです」
リタサポートでは、保護者負担をフォローするだけでなく、学校の顧問が担ってきた部活動の指導についても人材派遣を行っている。
▽リタサポート・大嶺亮一専務理事
「法人独自で人材バンクを設けていて、ご登録いただいた方々を、お困りの学校や部活動にマッチングする業務を行っています」
平日の放課後の具志川中。部活動の時間も、部顧問を務める教員は職員室で校務を続けていた。特に夏休み前の7月は忙しい時期だという。
▽サッカー部顧問・金本慶一郎教諭
「夏休み前は担任の先生は3者面談、学期末の評価、部活動では県大会、あと研修などもあって、一番忙しい時期だと思います」
昨年度までは、サッカーの指導ができる顧問が複数人おり、平日は教員たちが分担して指導することができた。しかし今年度の顧問は、金本教諭ひとりだけ。
どんなに頑張っても、平日は生徒だけで練習する時間が長くなっていた。
▽サッカー部顧問・金本慶一郎教諭
「業務の合間に行って部活をして、戻ってきて学校の業務をやったり、ということがあっていつも自分の中で葛藤していて、きょうは部活に行って教えられないなとか、最後終わりのミーティングに行って済ませたりとかもあった」
加藤さんは、学校で指導をする上で意識していることがあると言う。
▽外部コーチ・加藤潤さん
「指導者だけになると、学校(顧問)が全く関わらないとなるとちょっと難しいので」「学校の生活面のことなどで何か問題があるときはお互いに情報共有して、グラウンドで先生がいないときは、グラウンドでこういうことがあったから学校でどんな状況になっているか見てほしいと伝えています」
リタサポートが派遣するコーチの指導報酬や、試合時の送迎にかかる予算は、保護者会費の値上げすることで捻出。
これまで【年間3000円】だった保護者会費を、【月3000円】に値上げした。
さらに、リタサポートは基金を創設し、民間企業や個人から寄付を募って部活動支援の財源に充てている。
子どもを見守る大人の目を増やすことは、子どもの成長にもつながる。
教員や保護者の手が回らない部分は、その業務を外部に委託した具志川中。きょうも健全な部活動が続いています。
<取材MEMO>
具志川中サッカー部は地区予選をギリギリで通過して県総体に挑んだのですが、なんと県総体では3位入賞を果たして大躍進を見せました。指導に長けたコーチが就くと子どもたちも急成長します。
これまで教員や保護者に支えられてきた部活動は、試合の審判も各学校から出さなければならず、教員や保護者がボランティアで担ってきました。具志川中にはこの審判業務も、今年度からリタサポートから派遣されるようになりました。
部活動は教員のやる気やボランティア精神に頼ってきたところが大きいかと思いますが、過渡期に差し掛かっているようです。部活動が持続可能で子どもたちにとってより良いものになるために、行政や民間のどんなサポートが必要なのか、具志川中サッカー部にはそのヒントがあるように感じました。(取材 下地麗子)
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