(27日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会決勝、岐阜城北6―5県岐阜商)
立ち上がりから異変を感じ、マウンド上でもがいていた。最速149キロの県岐阜商のエース森厳徳(げんとく)投手(3年)は体が開き気味で、思い通りに球が投げられずにいた。
準決勝まで25回と3分の1を投げて四死球7。奪三振は26まで積み上げた。2年前にマウンドを踏んだ夏の甲子園に向け、調子は上々のはずだった。
2点リードの五回、失策が絡み1失点すると、連続四球で2死一、二塁のピンチを迎えた。岐阜城北の4番太田陽民(はるひと)選手(2年)に高めに浮いた失投を捉えられ、フェンス直撃の二塁打で同点に追いつかれた。
その後は調子を取り戻したが、同点で迎えた九回。連続三振でテンポ良く2死まで奪った後、五回以来の四球を与え、勝ち越しの走者を出した。「しっかり切っていこう」。内野陣がマウンドに集まり声を掛け合った。
ところが、さらに4連続四死球。「2死まで簡単に取れて、気持ちがゆるんだ」。土壇場で2点の勝ち越しを許した。
2年前の夏、背番号をつけて臨んだ甲子園は主力選手らが新型コロナウイルスに感染し初戦で敗れた。昨夏の岐阜大会は準決勝でマウンドに上がったが涙を飲んだ。
雪辱を期した今大会だったが、甲子園にあと一歩届かなかった。鍛治舎巧監督は「最後は疲れが見えた。四死球はあったが4失点。責められる内容ではない」とかばった。
「チーム一丸で取り組むことができた。いいチームだったと思う」。この日、苦しみながらも151球を投じた右腕は、そう言葉をふりしぼった。(保坂知晃)
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