(27日、第106回全国高校野球選手権福島大会 聖光学院10―5磐城)

 元チームメートの思いを乗せた一打だった。

 八回1死一、三塁で打席に磐城の高橋由伸主将(3年)が向かった。その直前、スタンドにいた中学時代のチームメートに声を掛けられた。「笑顔でいけ」。それを聞いて「楽しまなきゃ」と高橋主将。

 3球目。外角の直球をはじき返すと、右中間を破る適時三塁打に。スタンドにいた元チームメートらに、塁上からガッツポーズで応えた。

 声を掛けてくれたのは、日大東北の豊嶋海璃投手(3年)ら「いわきリトルシニア」の元チームメート。県内外の高校に進学した仲間はすでに地方大会で敗退した。高橋主将は4人から前夜、LINEで応援に行くと伝えられた。

 相手の聖光学院は140キロ超の右腕2人を擁する。磐城は速球対策として、投手を本塁から10メートルの位置に立たせて打撃練習に取り組んだ。

 しかしこの日、磐城の打者は速球にタイミングが合わず、高橋主将も3打席目まで無安打2三振に抑えられていた。

 だが八回は、四死球で得た好機に湊一真選手(3年)の左前適時打が出て、高橋主将が続いた。2点差に詰め寄り、終盤まで球場を大いに沸かせた。

 敗戦後、高橋主将の目に涙はなかった。「多くの応援の前で野球ができて、楽しかった」。将来は磐城の指導者を目指す。選手としてかなえられなかった甲子園出場を目指して。(滝口信之)

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