(27日、第106回全国高校野球選手権茨城大会決勝 霞ケ浦9―3つくば秀英)
決勝戦、スタンドを埋める観客。霞ケ浦の二塁手、森田瑞貴(3年)は試合前、兄の言葉を思い出していた。
7年前の夏、霞ケ浦の2年生だった兄の智貴さんも遊撃手として決勝の舞台に立った。
相手は土浦日大。延長十五回の激闘の末、9―10で敗れ、甲子園には届かなかった。
その夜、寮から自宅に戻ってきた兄は「緊張で普段通りじゃなかったな」とこぼした。
高校時代の兄の試合をずっと見てきたから、同じ学校を選んだ。「甲子園で校歌を歌うのが家族の夢。自分は三人兄弟の一番下だから、僕がラストチャンス」。そう言って迎えた最後の夏。
初回、相手の先頭打者の打球を処理して「落ち着いた」。四回1死二塁の場面では、外野に抜けそうな打球を好捕した。「思ったより足も動いている。練習通りだ。大丈夫」
3点差に迫られた八回裏、1死一、三塁の好機に打席が回る。「後ろにつなげば何とかなる。楽な気持ちで打席に入れた」。右前にはじき返して2点適時打。沸くベンチにガッツポーズで応えた。
「この大舞台で、いつも通りのプレーができたことが一番うれしい」。試合後、両親が見守るスタンドに向けて、仲間と一緒に大声で拳を突き上げた。そのときの心境を問われると、少しはにかんでこう言った。「やってやったぞ!って」(北上田剛)
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