(29日、第106回全国高校野球選手権岡山大会決勝 岡山学芸館4―3関西)

 「打てるものなら打ってみろ」

 1点のリードを許して迎えた四回、関西のエース・山本穏摩(しずま)(3年)は救援でマウンドに立った。1人目はフルカウントから、内角をえぐるような直球でバットを振らせず。変化球もさえ、続く2人も見逃し三振に切ってとった。大きな雄たけびとガッツポーズでチームを鼓舞した。

 初戦の2回戦は先発して7イニングを好投。3回戦は八回から抑え、準々決勝では四回からロングリリーフを担った。準決勝も七回以降を締めた。「いつでも投げられるのがエース」。この日は、切磋琢磨(せっさたくま)してきた左腕の山吹大智(同)に先発を託し、出番に向けて闘志を燃やしてきた。

 登板後は、五回も3人で仕留めたが、六回、先頭打者を安打で出す。盗塁と牽制(けんせい)悪送球で走者三塁とし適時打を許すなどして、この回に2点を奪われた。「流れを引き込むつもりだったが、相手の流れだった」

 チームは直後の六回裏、山本の熱投に応えた。1番渡辺諒斗(まさと)(同)からの3連打などで2点を返して1点差に迫った。

 「仲間たちの雄姿から力をもらった」。山本は息を吹き返すように七回を再び三者凡退に、八回は1死満塁とされたが無失点で切り抜けた。九回は圧巻。1番からの相手打線を3人とも空振り三振に仕留めた。

 「自分が抑えれば必ず逆転してくれる」。しかし七回以降は打線が沈黙。最後の夏は幕を閉じた。甲子園まであと一歩及ばなかった。

 それでもつないで、つないで、粘り強く戦い抜いた。「夏の戦いが、後輩たちの財産になってくれたら」。意地と誇りを見せたマウンドだった。(小沢邦男)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。