甲子園をかけ、124チームが戦った全国高校野球選手権西東京大会が終わった。シード校や注目校が力を発揮できず、苦しんだ一方、夏の戦い方を知っている伝統校が粘り強く勝ち上がった。特別支援学校が単独出場するという歴史も刻まれた。
最大の番狂わせともいえるのは、春の都大会準優勝で第1シードの東海大菅生の5回戦敗退だ。
拓大一相手に序盤、優位に進めていたが四回、投手陣が突如崩れ10失点。九回、1点差まで追い上げたが届かなかった。若林監督は試合後、継投のタイミングを悔いた。一方、拓大一の選手たちは「勝てると思っていなかったが、真っ向勝負で挑んだ」と口にした。
プロが注目する森井を擁する桐朋は初戦、富士森に敗退した。先発投手が初回、5点を失うと、森井は救援でマウンドへ。「仲間のピンチを救おう」と力み、森井自身も失点した。高校通算40本以上の打撃も精彩を欠き、七回コールド負けだった。昨夏準優勝で第2シードの日大鶴ケ丘も4回戦、延長十回タイブレークで駒大に敗れた。
伝統校は勝負強さをみせた。4強に残ったのは日大三、創価、日大二、早稲田実といずれも甲子園経験のある学校だった。なかでも、早稲田実は一戦ごとに力をつけていった。
初戦で昨夏4強の明大八王子を延長十回タイブレークで破ると、勢いがついた。国学院久我山との準々決勝では、9点差を追いつかれながらも、八回に3番高崎が決勝打を放ち、3時間33分に及ぶ打ち合いを制した。
3連覇を狙った日大三との決勝も3時間超えの熱戦になった。2度逆転されても追いつき、最後は早稲田実の8番内囿(うちぞの)が九回、サヨナラ打を放った。早稲田実の主将・宇野は試合後、日大三ベンチに頭を下げた。「日大三高さんじゃなかったらこんな最高の試合は出来なかった」。強豪との接戦を制することで強くなり、9年ぶりに夏の甲子園への切符をつかんだ。
今夏は悪天候で難しい試合を強いられたチームも少なくなかった。8強入りした早大学院は3試合連続で継続試合となるなど、初戦から敗れた準々決勝まで10日間のうち、8日も試合をする過酷な日程になった。
さわやかな風を大会に吹き込んだのは、青鳥(せいちょう)特別支援だ。昨年は連合チームを組んで初出場したが今年は、特別支援学校として全国で初めて単独出場を果たした。
対戦相手の東村山西も全力で臨んだ。3時間10分の激闘、青鳥特別支援は0―66で敗れたが、12人の選手が最後まであきらめず戦い抜いた姿が印象的だった。(西田有里)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。