開幕2か月前 エースにアクシデント

東京五輪はわずか0.103の差で銀メダル

初出場の4人で挑んだ前回の東京オリンピック。

0.103の僅差で金メダルを逃した日本は、パリオリンピックで、2大会ぶりの金奪還を目指しました。

しかし、オリンピック開幕の2か月前、東京大会2冠、世界選手権2連覇の絶対的エース、橋本選手が右中指を痛め、思うように練習が積めずにスタミナの低下や感覚のずれが生じてしまいます。

体操 エース橋本大輝が流した涙 悲願の団体金メダルへ

予選 橋本大輝選手

パリ大会の予選では得意の鉄棒の着地で大きく乱れるなど、6種目中3種目で13点台と得点を伸ばせず、苦しい戦いを強いられました。

ライバルの強豪・中国に3点以上の差をつけられ、予選2位となった日本は、団体決勝の前夜、5人の選手がミーティングを開きました。

キャプテン 萱和磨選手

キャプテンの萱和磨選手が、「絶対に2番はいやだ」と力強く訴えると橋本選手も「死ぬ気でやりますと応えるなど、全員が金メダルへの強い気持ちを共有し、思いを1つにしたといいます。

チーム力でつかんだ団体金メダル

団体決勝 橋本大輝選手

そして、迎えた団体決勝。

2種目目のあん馬で橋本選手が落下のミス。

谷川航選手

さらに、谷川航選手も得意の跳馬でミスが出るなど、中国に大きく引き離されます。

それでも、日本の選手たちは着地や倒立姿勢など、「Eスコア」を確実に積み重ねていきました。

岡慎之助選手

岡選手と杉野選手は初出場にも関わらず、ここぞという場面で一度もミスすることなく、そして、チーム全員が決して諦めることなく、最終種目の鉄棒を迎え、最後の橋本選手につなげました。

杉野正尭選手

全員が力を出し切って不調のエースを助け合い、つかみ取った金メダルでした。

決勝のあと、「みんなに助けられた金メダルで、この4人がいなかったら、この演技はできなかったし、やっぱり諦めなくてよかった」と話した橋本選手。

日本体操協会の水鳥寿思強化本部長は、「みんなでつないでいくことを心のよりどころにしていた。これまでは内村が引っ張ってきたが、新しい世代が体操の1ページを作ってくれたことがうれしい」と話し、5人をねぎらうとともに今後の期待をにじませました。

【詳しく】体操 男子団体 日本が金メダル 2大会ぶり奪還 五輪

パリ大会で最も力を発揮したのが初出場の20歳、岡選手です。

個人総合の決勝では、トップ選手たちに大きなミスが相次ぐ状況でも、緊張を感じさせずほぼミスのない、持ち味の美しい演技を見せ、金メダルを獲得しました。

体操 岡慎之助 「日本の宝」大けが乗り越えつかんだ金メダル

そして、種目別の鉄棒の決勝。

岡選手は、予定していた演技の難度は出場した8人の中で最も低かったものの、大きなミスは1つもなく、出場選手で唯一の8点台となる、8.633の高いEスコアをマーク。

最後の着地もかんぺきに決めて、3つ目の金メダルを獲得しました。

さらに、岡選手は、種目別平行棒でも銅メダルを獲得。
“日本の宝”の美しい演技を世界に示しました。

1つの大会で4つのメダルを獲得したのは、1984年のロサンゼルス大会で5つのメダルを獲得した具志堅幸司さん以来、40年ぶりの快挙です。

水鳥強化本部長は、「基本に忠実ですばらしい演技を世界が評価してくれた。大会までの1か月で強さが急激に高まり、このオリンピックが急成長させた」と評価しました。

“航平さんのように” さらなる高みへ

岡選手は、24歳で迎えるロサンゼルス大会へ、自身の強みの「美しさ」に加え、跳馬の「ロペス」や鉄棒の「カッシーナ」など、難度の高い技にも挑み、さらなる高みを目指すことにしています。

「もっと強くなって航平さんがやってきたように常に勝ち続けられる選手になりたい」と飛躍を誓いました。

パリでの収穫糧に どこまで強くなれるか

オリンピックの“世界一過酷な選考レースを勝ち抜いた”20歳の岡選手。

そして、不調でもエースの底力を見せた橋本選手も、次のロサンゼルス大会での雪辱を誓っています。

世界トップレベルの力を発揮し、体操強豪国として層の厚さを世界に示した日本は、パリ大会での収穫を糧に、さらにどこまで強くなれるのか、期待されます。

【NHKニュース】パリオリンピック2024

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