有田工は八回の守りで立て続けにバント処理を失敗した。まさかの4失策が重なり、4点を勝ち越された。鍛えてきた堅守が乱れ、梅崎信司監督は「日ごろ起きないミスが、終盤の一番大事なところで出てしまった」と信じられない様子だった。
それでも、あきらめなかった。なお、1死一塁から、遊撃手の前田壮梧主将(3年)が難しいバウンドの打球をうまくさばき、併殺で流れを止めた。
6点を追う九回の攻撃は8番の前田主将から。「逆転できると信じていた」。中前安打で出塁。ベンチからは仲間が声を張り上げる。さらに3安打で続き、2点を返した。
エースも粘った。左腕の石永煌希投手(3年)は左ひじに違和感があり、直球は130キロに届かなかった。コーナーを丁寧につき、スローカーブを有効に使った。後ろから声をかけ続けた前田主将は「これまでなら自分から崩れていたが、成長して粘り強く投げてくれた」とねぎらった。
前田主将は苦しんできた。佐賀大会では13打数無安打。打順は5番から8番に下がった。「『打ちたい』と逆に消極的になっていた。甲子園では楽しまないと」。もう、迷いはない。この日2本の中前安打はともに直球を狙い打った。「これまでチームに貢献できる打撃をできなかったが、みんながカバーしてくれ、励ましてくれた。そのお陰で2本打てた」
この日のチームの13安打は全て単打で、コツコツとつないだ。この夏、勝ち上がる原動力となった粘り強さとチームワークを、晴れ舞台の開幕戦で確かに刻んだ。(森田博志)
有田工は7日、開幕戦で滋賀学園と対戦。一時は逆転する粘りをみせたが、6―10で敗れた。2年ぶりに出場した有田工は初出場した95回大会(2013年)以来の白星はならなかった。
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