パリオリンピック™では、ボクシング女子選手の出場資格をめぐり、波紋が広がっています。女子66kg級の女子選手について出場資格があるのかという点について、トランプ前大統領やイーロン・マスク氏など著名人もSNSで投稿するなど混乱が起きています。「性別」を巡る議論が世界で起きていることに、スポーツとジェンダーに詳しい専門家は「性は高度なプライバシー、多くの人が誹謗中傷のように語っていることが最もよくない」と指摘しました。競技の公平性と、人権やプライバシー保護をどう両立させればいいのでしょうか。
世界で議論が加速「ボクシング女子」性別と出場資格
パリ五輪のボクシング66kg級では、アルジェリア代表のエイマヌン・ハリフ選手(25)は決勝に進出して、銀メダルか金メダルというところまで来ています。しかし2回戦でハリフ選手と対戦したイタリアのアンジェラ・カリニ選手が開始46秒で棄権。「パンチが重すぎる」というような発言も当初ありました。
これに対してIBA(国際ボクシング協会)は、今回のオリンピックに出場しているエイマヌン・ハリフ選手と、台湾のリン・ユーティン選手(57kg級)の2人は、去年の世界選手権では、『検査でテストステロン値が高い』として、出場資格をはく奪されたと言った、これが議論のきっかけとなりました。
ではテストステロンというのは、何のことでしょうか。
「テストステロン」は男性ホルモンの一種
西別府病院スポーツ医学センターの松田貴雄医師によると、テストステロンとは「男性ホルモンの一種」で、筋力増強やスタミナに影響することが多いというのはわかっています。
しかし、テストステロンが多いと必ず体が強くなるかというと、そうではないということで、値が高くても、筋力の増強に繋がらない人がいることも判明していますので、女性からすると、テストステロンが多いことで有利、とは言い切れないそうです。
男性のテストステロン値は、平均的に女性の20倍ぐらい多く、テストステロン値が男女の差ぐらいあったとすると、小学生と高校生が戦うぐらい危険なことにもなると言われます。安全性を考慮した場合に、どこでに公平性を持つべきかというのがIBA(国際ボクシング協会)の言い分です。
また、検査の詳細を公表するかしないかについては、IOC(国際オリンピック委員会)も全ての検査結果を公表しているわけではありません。なぜなら、各選手のプライバシーに関わるためです。
伊メロー二首相や米トランプ前大統領も言及し…混乱と誤解
2回戦で棄権したイタリアのメロー二首相は、『男性の遺伝的特徴を持つ選手は女子競技には参加すべきではないと思う』と言及。アメリカのトランプ前大統領は過激に『女性スポーツから男性を締め出す』『男性が女性を殴るようなものだ』とSNSに投稿しました。
これを受けて、心は女性で体が男性「トランスジェンダー」の選手なのではないか、といった憶測や誤解が世界中で起きてしまいました。
またIBA(国際ボクシング協会)は、ハリフ選手の遺伝子レベルの検査結果として、「XY染色体」を持っていると公表しました。多くの女性は「XX染色体」、多くの男性は「XY染色体」を保有していますので、多くの男性が持つ染色体をハリフ選手が保有しているため、このことも含めてトランスジェンダーではないかと言われました。
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