(15日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 山形・鶴岡東0―1西東京・早稲田実)
延長十回表、ここまで一人で鶴岡東打線を4安打無失点に抑えた早稲田実のエース・中村心大(こうだい)(2年)に異変が起きる。左足がつり、足を引きずってマウンドからベンチに戻った。
その裏の攻撃、1死満塁、一打サヨナラの場面で中村に打順が回ってきた。そのまま打たせるか、足をつった中村に代打を出すか。和泉実監督の答えは前者だった。「どうしようかなといろいろ考えたが、中村にかけようと思った」
治療を終えた中村がベンチから姿を現すと、スタンドから大きな拍手が起きた。拍手がやんだ後の初球、中村は迷いなく相手エースのスライダーを振り抜いた。「初球から振ろうと決めていた。自分で決めたかった」。打球は前進守備の右翼手の頭上を越え、今大会初のサヨナラ打に。緊迫した投手戦に自ら終止符を打った。
この日の中村は投球もさえ渡っていた。前半、直球を中心に変化球をからめて五回まで無安打。終盤は変化球を多投。直球はコーナーに決まり、ピンチの場面も切り抜けた。捕手の山中晴翔(同)は「(中村は)いつもより冷静だった」。鶴岡東の左の好投手・桜井椿稀(つばき)(3年)とともに、スコアボードにゼロを並べた。和泉監督は「(お互いに)高め合った」とみる。
中村は西東京大会5試合を投げ、防御率は7点台。ストライクが入らないまま厳しい展開に持ち込まれることが多かった。甲子園の初戦も初回、相手打線につかまり、2失点。中盤は好投したが、後半は球が走らなかった。「自分の納得のいく球はなかった」
短期間で見違えた中村に和泉監督は「頼もしいエースが誕生した」。強打のチームが、甲子園でまたひとつ新たな顔を見せ、強くなった。(西田有里)
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