(16日、第106回全国高校野球選手権大会3回戦 霞ケ浦2―6滋賀学園)

 5点を追う九回裏、無死一塁。この日4番に入った霞ケ浦の羽成朔太郎(3年)は中前安打で好機を広げ、一塁上で大きくガッツポーズした。

 心の中で「みんななら続いてくれる」とつぶやいた。次打者の内野ゴロで1点が入ると、満面の笑みを浮かべた。

 1年の夏から打線の中軸を任された。準優勝に終わった昨夏の茨城大会でも、決勝に5番打者として出場。チーム最多の3安打を放った。

 性格は「負けず嫌い」。自宅は学校まで自転車で通える茨城県土浦市にあるが、あえて高校の寮に入った。野球に打ち込むためだ。「自分が打てば、チームは勝つ。そんな頼られる選手になりたい」。人一倍、バットを振ってきた自負がある。

 ただ、代替わりして自らが最高学年になった昨秋以降、チームの調子は上がらなかった。秋と春の県大会は、続けて8強どまり。「勝てないのは自分が打てないせいだ」と焦り、打撃の調子を落とした。

 今夏の茨城大会をチームの力で勝ち進むなか、心境に変化が生まれた。初戦では後輩の大石健斗(2年)がサヨナラ犠飛を放ち、優勝候補の一角だった鹿島学園との準々決勝では、同級生の雲井脩斗や森田瑞貴の長打で競り勝つことができた。

 「頼れる仲間が周りにいる」。そう思えた瞬間、気持ちが楽になった。「無心で打席に入れるようになった」

 初戦の智弁和歌山戦では、五回に三塁打を放ち、貴重な追加点を挙げた。3回戦でも、二回にチーム初安打となる三塁打を放ってもり立てたが、チームとして相手の継投を打ち破ることができなかった。

 「悔しさはある。ただ、この仲間でここまで来られたことを誇りたい」。試合後、目を赤らめながらも胸を張って話す姿は、頼もしかった。(古庄暢)

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