オランダのディーデ・デ フロート選手。

6年以上、世界ランキング1位の座を守り続けている絶対女王です。世界2位の上地選手とともに近年の女子・車いすテニス界を文字どおり引っ張ってきました。

上地結衣 選手
「彼女がコートを挟んでこちらまで来てくれて、本当に申し訳ない気持ちだったり、感謝の気持ちだったり…いろんな気持ちが湧いてきました

上地選手にとって東京大会からの3年間は、その彼女に勝つためだけに過ごしてきたと言っても過言ではない日々でした。

デ フロート選手との対戦成績は今大会まで通算16勝46敗で、ことし7月の大会で勝つまで実に3年5か月ほどの間に29連敗していました。

東京大会での上地選手とデ フロート選手

東京パラリンピックの決勝でも敗れていた上地選手はパリ大会まで「今度こそ彼女に勝って金メダルを取る」と試行錯誤を重ねてきました。

「新しい戦術が必要。ブラッシュアップしていかないと勝てない」とラリーに持ち込ませずに決定打を打つために戦術の見直しや体力強化、そして、車いすの座面の高さの調整まで行いました。

やるべきことはやってきた。あとはプレーで発揮するだけ」

大会に向けて決意を固めた上地選手は「ローランギャロス」のセンターコートで戦うデ フロート選手との決勝に勝つ自分の姿を、しっかりイメージしていました。

前日のダブルスでデ フロート選手たちのオランダペアを破り、勢いに乗って迎えたシングルス決勝。

ただ、第1セットは4-6で奪われて追い込まれました。
第2セットの4-3で迎えた第8ゲーム、戦術の見直しが功を奏しました。

彼女に勝つために磨いてきた「ドロップショット」、ボールをネット際に巧みに落とすショットが生きたのです。

このショットはコートの後ろ側でプレーしラリーに持ち込んでくるデ フロート選手を前に出してプレーさせたいと、車いすテニス界のレジェンド、国枝慎吾さんに教えを請い精度を上げてきました。

東京パラリンピック(2021年)国枝さんと

決勝で解説席に座った国枝さんは上地選手のドロップショットについて「相手の頭にちらつくので、どんどん守りにくくなっているはず」とその効果を指摘しました。

上地選手はこの第8ゲーム以降、デ フロート選手にラリーに持ち込まれることが減り2セットを続けて取って勝利につなげました。

上地選手自身もドロップショットについて「どこかで出したいと思っていたショットの1つだったので、あのタイミングでしっかりと打ててよかった」と勝敗を分けたカギの1つとしてあげました。

戦いを終えた2人はしばらく拍手が鳴りやまない中で「勝って涙、敗れて涙」でした。

その時間は「世界の頂」を知った2人だけに与えられた、特別なものであるように感じられました。

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【NHKニュース】パリパラリンピック2024

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