パラリンピック新記録でレースを制した木村選手。

6日前に金メダルを獲得した時と同様に腕を高々と突き上げましたが今度は左腕を3秒ほど上げ続け、その存在感を世界に強烈にアピールしました。

木村敬一 選手
「もうこれ以上ないくらいのレースだった」

またも完璧なレース運びができたのは、「自分らしさ」へのこだわりと、一見、正反対の「柔軟性」という双方を木村選手自身が持ち合わせていたためでした。

まず、「自分らしさ」とは「がむしゃらな泳ぎ」です。

水の抵抗を受けやすく体力の消耗は激しいというデメリットはあるものの、木村選手は徹底的に肉体を鍛え上げることで推進力を生む長所として、その泳ぎを貫いてきました。

その結果、前回の東京大会での初の金メダルという成果につながりましたが、生まれてきたのは「自分がどこまで記録を伸ばせるのか挑戦したい」という探究心。

新たな自分を求める中で「柔軟性」も持ち合わせていた木村選手が追求し始めたのが「美しい泳ぎ」でした。

星奈津美さんが指導(2023年3月)

そこで頼った1人がオリンピックのメダリスト。

2大会連続で銅メダルを獲得した星奈津美さん、10年来の友人です。

見えなくても星さんの腕を触って正しいの腕のかき方を学び、水中での姿勢の保ち方をことばにして伝えてもらう日々。それらを受けて地道な基礎練習を続ける日々でした。

「がむしゃらな泳ぎ」での課題は後半の50メートルでの減速でしたが、2人で「美しい泳ぎ」を身につける中で改善。

それから1年半ほどたって迎えたパリ大会直前の合宿でフォーム改良の完成度を尋ねた時には「8%くらいですかね」と苦笑いしながらも「調整は順調で調子がいい」と自信を見せました。

そのワケが「がむしゃらな泳ぎ」「美しい泳ぎ」のいいところを取ったいわば“ハイブリッド型の泳ぎ”でした。

金メダルを獲得した決勝、後半の泳ぎに特徴がありました。

前半の50メートルでの2位との差は0秒52でしたが、「美しい泳ぎ」によって体力の消耗を抑えられたことで、後半の「がむしゃらな泳ぎ」が可能に。

ぐんぐんと前に行く力強い泳ぎで後続の選手を一気に突き放しトップでフィニッシュしました。自己ベストを0秒27更新し、1分0秒90のパラリンピック新記録で、2位との差は2秒近くに広がっていました。

後半だけのタイムだけを見ても2番目の選手より1秒2速くトップでした。

銅メダルの富田選手と

「いろいろな人の知恵を借りて技術的な部分の練習も体力的な部分もどちらも粘り強く逃げなかったことで最高の泳ぎができた

事前合宿で「8%」と答えていた泳ぎの完成度を再び尋ねると「100点満点で言えば10点くらいかな」と再び苦笑いしていました。

では、いつ「100点」になる日が来るのか。

ただ、どれだけ輝く色のメダルを取っても、記録を更新し続けても、みずからの泳ぎに向き合い続ける木村選手にとっては、その日が永遠に来ないのかもしれません。

【詳しくはこちら】木村敬一が金 富田宇宙が銅 競泳男子100mバタフライ

【NHKニュース】パリパラリンピック2024

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