試練の名古屋場所
大の里にとって、7月の名古屋場所は試練の場所となった。
去年の夏場所で、幕下10枚目格付け出しで初土俵を踏んでから、スピード出世を続けてきたが、名古屋場所では初めて初日から2連敗を喫し、4日目までに3敗と序盤から苦しんだ。
身長1メートル90センチを超える大きな体を生かした力強い立ち合い、得意の右を差して一気に攻める相撲がなりを潜め、攻めきれずに引いてしまう相撲が目立った。
最終的には9勝6敗で勝ち越し、4場所連続の三賞となる殊勲賞を獲得したものの、口にしたのは反省のことばだった。
大の里
「悪いところが出た場所だった。またしっかり気持ちを切り替えたい」
先場所の反省生かして
先場所で思うような成績を残せなかった要因として大の里が挙げたのが「考えすぎたこと」だった。
先場所も成績によっては大関昇進の機運があった大の里だが、昇進を意識しすぎてしまったと反省し、秋場所に向けては「あまり先のことを気にせずに、頭を真っ白にして、15日間頑張ることだけを考えていきたい」と、場所前から無心で臨むことを強調してきた。
番付発表後は師匠で元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方の胸を借りて相撲を取るなど、調整にも自信をのぞかせていた。
大の里
「もう一度攻める意識を持って、15日間頑張りたい。しっかり稽古も積んできたし、今場所は違う。初日の入りが大事で、勝つか負けるかは大きい。いいスタートが切れるようにしたい」
前に出る相撲で
迎えた初日。部屋での朝稽古でも、いつもどおりに稽古場に姿を見せ、四股(しこ)や立ち合いの確認で汗を流した。
稽古のあとの取材ではリラックスした表情で「先場所の反省を生かしてやってきた。相手どうこうより、自分しだいなので、迷うことなく頑張っていく」と静かに闘志を燃やしていた。
幕内の土俵入りのあとには、夏場所の優勝額の除幕式が行われた。場所前から「飾られるのが楽しみだ」と話していたが、その様子を見守る表情は、すでに初日の取組を見据えていた。
相手は去年、2回優勝争いに絡んだ22歳の熱海富士。過去2戦2勝と分のいい相手に対し、立ち合い、得意の右を差す形をつくる。
熱海富士の腰も重く、なかなか前に攻めきれないが、休まず攻めることで、少しずつ寄っていき、熱海富士を土俵際まで追い込む。
ここで寄り切れずに回り込まれてしまうが、最後は土俵際で冷静にはたき込んだ。物言いがつく一番となったが、軍配は変わらず、2場所ぶりの初日白星。しかし、取組後は内容はよくなかったと反省しきりだった。
大の里
「先場所は初日に負けているし、入りが大事だと思っていたので勝てたのが大きい。相手のペースで内容はよくなかったと思う。でも勝つと負けるは違う。よくない相撲でも勝ちに結び付いたのは何かしらよかった。先のことを考えずに、一番一番集中して頑張る」
大関昇進の議論を預かる日本相撲協会の審判部は、今場所の大の里に対し、数字もさることながら、相撲内容も見ていくとしている。
先場所の反省を生かして考えすぎず無心を貫くことができるかが、昇進への鍵を握る。
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