50歳を迎えても、いまなお、気付き、進化を続けるイチロー氏。4年目を迎えた「高校野球女子選抜」VSイチロー選抜「KOBE CHIBEN」の試合後に共に戦った高校野球女子選抜の選手たちに、イチロー(50)が常識を超えたイチ流の金言と熱きメッセージを伝えた。

なお、熱きメッセージにあふれた後編は
イチロー氏 「怪我した人は実は強くなる」そして「優しい人になって欲しい」高校野球女子選抜に贈る言葉【後編】

真っ先に浮かんだアドバイスは“人に対する敬意”がすごく大事

イチロー:
僕がみんなに何かその次に進むみんなに一言アドバイス、先輩としてアドバイスがあったらと…僕は真っ先に浮かんだのが…今年、僕がすごく感じるのはやはり敬意なんだよね。あらゆるものに対する敬意を持っているよねみんな。僕がさっき言った事、野球への敬意、相手への相手の選手、僕たちに対する敬意チームメートに対する敬意、見てくれている人達への敬意を感じる…これね、なかなか持てないんですよ。みんな当たり前にそれをやっているけど、すごいこれは特別な事なんです。だから、次のレベルに行っても、みんなすでにそれを備えているので、みんなにとって当たり前の事かもしれないけれど、どのレベルに行っても、いずれ野球をやめる時が来ても、それはずっと持っていて欲しいですね。野球に対する事だけではなく、やっぱり人に対する敬意というのがすごく大事なんです。だから僕は感情を見せない選手、感情はもちろんあるのだけれど、喜びも悔しいことも見せない選手だけれど、それはやっぱり敬意に基づいているところが大きい。いい所でヒットを打ったとか、ヒットを打てば喜んでいる。でもそれは全然なんかこう相手にとって嫌な気持ち、僕全然嫌な気持ちにならない。でもあるレベル、例えば、プロ野球そういうのは僕は好きじゃないんだよね。やっぱり同じ野球、同じフィールドで戦っている相手に対して、もちろん敵だからね、プロの世界は特に生活をかけてお互いやっているわけだから気持ちはわかるんだけれど、もうちょっとゲームが終わった時に、いやいいゲームだったねって言い合えるような関係だったらすごくいいなと思うんですけど、なかなかそうはならないんだよね。今日(22日)のゲームをそういう気持ちになったでしょ。1試合終わった後に勝った負けた結果に関わらず、相手に対する敬意すごく持ってるんじゃない。

イチ流は“体・心・技”「元気でいる事はすごい大事な事」

Q.野球選手に限らずスポーツ選手は“心・体・技”の3つの練習すると思うですけど、“心”のトレーニングで意識してるトレーニングはあるか
イチロー:
今、引っ掛かったのは普通“心・技・体”だけど、“心・体・技”というのは普段からその順番を大事にしているって事?

Q.自分達は監督から「心・体・技」の順番で教わっている

イチロー:
そうなんだ、それはユニークだね。面白い考え方だね。“心・体・技”…僕は実は一番に来るのは“体”だと思うんですよ。“体・心・技”。順番で言うとそうなのか、でも一番にくるのは“体”なんだよね。“心”が整っていても、例えば“体”がそもそも動ける状態じゃなかったらできないでしょうプレー。だから<元気でいる事はすごい大事な事>なんだよね。僕ははあくまでも“体”が大事だと思っていて、“心”、もちろん大事なんだけれども、それは大前提としてだって、怪我していたらプレー出来ないでしょ…だからそれを大事に僕はしている。

“練習は裏切らない” “努力は報われる”のか

イチロー:
高校野球を見ていると、好きな言葉とか出てくるじゃない。テレビを見ていると、よく見かけるものの一つに“練習は裏切らない”とかってよく言う子もよく言われるけど、“努力は報われる”とか、もう一歩先を見てほしいんだよね。僕は。練習は裏切らないは、まあそうかなって思いがちになるんだけれども、でもどう練習しているか次第じゃない…それって。しんどい事を重ねていても、間違ったやり方でやってたら、そんなの上手くなれるはずはなくてさ。自分頑張ってるから、結果が出る上手くなれる、そうありたいのもわかるんだけど、だけど【その努力っていうのは本人が決める事じゃない】でしょ。「俺、努力している」「私努力してます」って、何か変な感じしない?自分で言ってたら、チームメートたちがいや、あいつは頑張ってるすごい努力家だ。それはもちろんいい。第三者の評価でも自分でさ。私努力しているのに、なんで上手くなれないのとか、おかしくない。【それって人が決めることだから】。報われてほしいけど、見返りを求めたら返ってこないでしょ。それに近い感覚だと思わない?努力したら報われる、上手くなる。練習したら上手くなる。同じ事だよね。目指してほしいのは、人が見てたら努力だと思うけど、努力に見えるけど、本人はそう思っていない状態っていうのは結構強いと思う。私にとっては普通のことなのに、何かそうやって周りは評価してくれるな、だったら、すごくいい状態だと思うね。でも、自分でこんなにやってるのに、練習してるのになかなか次に進めないっていうのが僕は違うと思う。今の話全然理解できない人います?どうですか?理解できますか?厳しいと思う?厳しいですよ。この考え方は。でも、そうじゃなかったら上手くならないんですよ。このおじさん厳しいなって思う?どうです?でも厳しいものです。厳しい。それを乗り越えなかったら、次に行けないんですよ。いつも楽しいだけで、今日の試合はすごく楽しい試合だったよね。色々なものが詰まった。僕にとっても夢のような試合です。(でも、)ここに至るまでには楽しいことだけやってたら、ここには来られなかったでしょう?みんなそれなりにやっぱ厳しいさに耐えてきたから、ここにいるんじゃない?違う?ただただ楽しいだけでここにないでしょう?振り返ったら。どうでしたか?ただ、ひたすら野球が好きで楽しんできて、ここに今日いると思う?僕は普段のみんなを知らないから、それは分からないんだけど。どうですか?

Q. 楽しいだけじゃないです。
イチロー:
そうでしょ?やっぱり、ある程度苦しみを乗り越えてこなかったら、特別な場所には行けないし、本当に楽しいなんていう気持ちにはならない。ある程度真剣に取り組んでいるんだから。いや、もう遊びの野球だったらただ楽しいだけでいいですよ。でもみんな違うじゃん。次も目指してるでしょ。上手くなりたいと思ってるでしょ?だったら厳しいですよ。普通のことです。

いい結果出したら、その瞬間は満足していい

(一方で)満足したらそこで止まっちゃうから満足しちゃダメだってよく聞くでしょう?僕は全然そんなふうに思わない。いい結果出したら、その瞬間は満足していいですよ。達成感を味わっていいですよ。だけど次に行く。だって人間だから、そんな戒めてばっかだっていうのはつまんないでしょう?いい結果を出したのに、いやまだまだって言い聞かせるのはいいけど、本当にそう思っていたら、やっていけないでしょう?だって、楽しいとか気持ちいいとかなかったら、やっていけないでしょ。でも野球は、打つのは特に3割しか…3割打てば、プロでは良しとされるわけだけど、7回は失敗するわけ。僕は満足感とか達成感を十分味わってほしいと思うんだよね。それを味わわなかったら次にいけないと思っているわけよ。だから、そういう意味では僕は甘いですね。全然戒めてないから。その瞬間、めっちゃ喜んでますもん。出さないだけで。表現しないだけですごく喜びますよ。でも、また次があるから。次の目標が出てくるから、そこに向かっていくわけですけど、戒めてばっかの人ってそれができないんだろうね。

僕、じつはインコースが大好きなんです

Q.自分はイチローさんみたいなタイプのバッティングがしたくて。自分の中ではイチローさんはすごい流すイメージが強い…流すとバットが後っていうか遅れて出るイメージだと思っているが、その時に自分はインコースが苦手でその時に詰まってしまうことが多いんですけど、その時はどのようなイメージで打ってるのか教えてほしいです。

イチロー:
僕、じつはインコースが大好きなんですよね。インサイド、でも大好きだから、大好きなんだけれど、でもそこにインサイドのインコースの速い球を待ってると、やっぱこれを開かされる。遅れたくないから。そうすると外に抜かれたりしてバット届きませんとか振らされたり。それはすごく嫌なのね。だから好きなインコースなんだけど、そこは何か逃げる術を僕は携えたというか。基本的には追い込まれれば追い込まれるほどやっぱセンターからショートの上ぐらいのイメージでやってたことが多い。だけど本来はここが大好きなのね。流すというよりは、もちろん体の前で出されてバット残して拾った感じでショートの上とかたくさんあるんだけれど、それは流すという感触に近いかな。でもその【左バッターがレフト前に打つことが別に流してるわけではない】、しっかり捉えて【力を伝わった打球であればそれは僕は流すとは言わない】ので。まあ左方向は全部流すという表現をするなら、それはちょっと違うかもしれない。【その考え方を変えた方がいいかもしれないね】。だから極端に言えば、ライト、左バッターがライトに打っても流すこともある。引っ張っているのに流している、のはある。レフトだけど、レフトで引っ張ってるとは言わないけど、流しではない。僕のバッティングの特徴はとにかく手が【ここに残る事】なんだよね。

自ら解説 イチローの打撃は「とにかく手がここに残る」


それさえできれば、もう、よく言われるのはキャッチャーやっている人はすぐ分かるんだけど、あれ、見逃すと思ったら最後に出てくるって。それぐらい遅い手が。それはよく言われる。

【詰まらされたら負けという考え方】は…

キャッチャーをするとよくわかるんだけど、これが【出来ない人はどうしても手が出ていく】。【詰まりたくない、詰まりは負けだという考え方は捨てた方がいい】と思う。最終的には、だってヒットになる事が技術なので、【詰まらされたら負けという考え方】は、これは危ないんです。でも、そういう人すごく多い。プロ野球選手も。詰まりたくない。だから手が早くなっちゃう。でもそれするともう、穴がたくさん見えちゃう。詰まっているのにヒットにされる、相手からしたらね。あれは打ち取っているのに“落とされる”とかっていうバッターが嫌なんですよ。勝負強いバッターは甘い球をゴーンってチャンスでホームラン打つバッターじゃなくて、いやらしい球を詰まってても、先でもヒットにするバッターが勝負強いバッター。相手が嫌がるタイプ。そういうのを目指してほしいね。詰まっていいんだ全然。詰まり方はあるけどね、確かに。でも、詰まりイコール負けでは全くないです。それでヒットにされることの方が、甘い球をどかんって打たれるよりもピッチャーは嫌だと思う。だって甘い球投げなきゃいいわけだから。そういうバッターは。厳しい所投げている、振ってほしい球なのに、で、実際振っているのにヒットにされる。これが相手としたら一番嫌だと思う。キャッチャーも嫌だと思います。どうですか?それピッチャーやっている人キャッチャーやっているそう思わない?甘い所ははさ、甘い所投げなければ、いい訳だから。そんなの負けじゃないよね、だって失投なんだもん。失投を捉える技術というか、それは大事な事だけど、でも相手が振って欲しい球、いい球、相手からすればいい球投げているのに、 “なんで”ヒットをされる方が嫌でしょう。それを目指してほしい。

「生涯忘れない日になります」とイチロー氏が大切にする「高校野球女子選抜」との試合と選手達への講義はさらに熱を帯びていく…
【後半】は…
イチロー氏 「怪我した人は実は強くなる」そして「優しい人になって欲しい」高校野球女子選抜に贈る言葉【後編】


【過去の対戦成績】
2021年 KOBE CHIBEN 1-0 高校野球女子選抜 
2022年 KOBE CHIBEN 7-1 高校野球女子選抜
2023年 KOBE CHIBEN 4-0 高校野球女子選抜
2024年 KOBE CHIBEN17-3 高校野球女子選抜

【イチロー選抜 KOBE CHIBEN】
チーム名の由来は高校野球の強豪・智辯和歌山から。イチローが試合観戦時に応援団のブラスバンドに魅了され大ファンになり、練習拠点とする神戸を掛け合わせて「神戸智辯」となった。

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