来春の第97回選抜高校野球大会は、大阪勢が不在となるかもしれない。都道府県別で最多の優勝回数と勝利数を誇るが、出場校を選ぶ重要な判断材料になる今秋の近畿大会で出場3校がすべて早々に敗れたためだ。不在となれば98年ぶりの珍事となる。

 今秋の近畿大会は、4日の決勝で東洋大姫路(兵庫)が5―1で智弁和歌山を破って優勝した。そのほかの4強は天理(奈良)と市和歌山で、大阪勢の姿はなかった。履正社(大阪1位)、大阪桐蔭(同2位)が1回戦で姿を消し、大阪学院大(同3位)は準々決勝で敗れた。

 大阪学院大の辻盛英一監督は「無理でしょう。選抜はもう考えていません。もっと(選手に)パワーをつけたい」と話した。履正社の多田晃監督は「全てが後手後手に回った。完敗」と悔しさをあらわにした。大阪桐蔭の西谷浩一監督は「負けたので、もう夏に向かってやるしかない」と選抜後を見据えていた。

 32校が出場する来春の選抜は、一般選考29校のうち近畿地区から6校が選ばれる。例年の選考に基づくと、秋の近畿大会で準決勝に進めば出場は有力となり、残る2校は準々決勝までの試合内容や地域性などが比較検討され、決まる。

 準々決勝で敗れたのは大阪学院大、立命館宇治(京都)、滋賀学園、滋賀短大付の4校。大阪学院大は東洋大姫路に0―4で敗れ、立命館宇治は市和歌山に0―10で6回コールド負け。一方で、滋賀の2校は1回戦で大阪桐蔭と履正社を倒しており、選考では追い風になるとみられる。

 大阪勢はこれまで選抜で優勝12回、通算215勝を挙げており、いずれも全国最多だ。2017年の第89回大会は、大阪桐蔭と履正社が決勝で対戦。大阪桐蔭が勝ち、2度目の優勝を飾った。過去の選抜で大阪勢が出場を逃したのは1927(昭和2)年の第4回大会のみ。来春の出場が叶(かな)わなければ、大阪勢にとって98年ぶり2度目の屈辱になる。

 一体どうしたのか。

 共通したのは得点力不足だった。履正社は滋賀短大付との1回戦で左投手の緩急に苦しんだ。大阪桐蔭は、昨年まで秋の近畿大会は5年連続決勝進出、3年連続で優勝していたが、滋賀学園との1回戦で攻めあぐね、逆転負けした。大阪学院大は2試合で1得点だった。3校とも外野手の頭を越えたり、外野手の間を抜けたりする打球がほぼなかった。

 大阪府高校野球連盟の入道美之理事長は「履正社は大阪1位という油断がどこかにあったのではないか。大阪桐蔭は低反発バットになって、かつてのようには勝てなくなった。大阪には厳しい近畿大会になった」という。

 対照的に、今秋の近畿大会を制した東洋大姫路は決勝までの4試合で計40安打、29得点。力強い打球が野手の間を抜け、畳みかける迫力が打線にあった。岡田龍生監督は今年から導入された低反発バットへの対応について「これまでは金属バットの性能に頼っても飛んでくれたが、今はしっかりボールをとらえる打撃技術を身につけることが重要になっている」と語った。

 準優勝の智弁和歌山は、伝統の強打に頼らなかった。神戸学院大付(兵庫)との1回戦は送りバントを六つ決め、バント安打や盗塁を絡めて5点を奪った。中谷仁監督は「(新チームになったばかりで)秋(の大会)はなかなか打てない。先にリードする展開に持ち込むことがより大事。バントなど細かいプレーの意識はチームに徹底させている」。

 ただ、大阪勢が諦めるのは、まだ早い。各地区の秋の大会を勝ち抜いた10代表による明治神宮大会(20日開幕)で近畿地区代表の東洋大姫路が優勝すれば、近畿は神宮大会枠を獲得し、1増の7校が出場できる。

 困難の克服など、大会成績以外の要素も評価される21世紀枠で2校が選ばれる。府内からは今秋の府大会16強の市岡が候補校になった。

 選抜の出場32校は来年1月24日の選考委員会で決まる。(渋谷正章)

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