「デフリンピック」は4年に1度開かれる聴覚障害のある人たちの国際スポーツ大会で、来年、100周年の記念大会として日本で初めて東京などで開かれます。

都内で開かれたイベントでは、全国の小学生から高校生が3つの候補から投票で選んだメダルのデザインが発表され、選手が活躍して大きく羽ばたいていくことを願って折り鶴などがデザインされています。

そして、イベントでは手話などを元に考案された応援スタイル「サインエール」が初めて披露されました。

スポーツの応援は声や歌など音がメインで、聴覚障害のある選手からは受け取りづらいという声や、聞こえる人と聞こえない人が一緒に応援する場合、リズムを合わせることが難しいという声がありました。

「サインエール」では、「拍手」や「日本」を表す手話などを組み合わせて、「日本、メダルをつかみとれ」という応援や、振動と音でリズムを合わせられるよう太鼓も使われました。

会場で行われたデモンストレーションでは、太鼓が鳴り響くなか、観客は選手が走る映像に合わせて新しい応援スタイルを体験していました。

開発に携わったデフ陸上の山田真樹選手は「スタートラインに立つと緊張するので、見える形での応援を力に変え、いい走りが出来るよう頑張っていきたいです」と話していました。

東京都によりますと、今回の応援スタイルを元に大会に向けてそれぞれの競技や会場に合わせた形を検討していくということです。

デフ陸上 山田真樹選手“見える応援 改めて力になる”

開発に携わったデフ陸上の山田真樹選手(27)は、生まれたときからほとんど耳が聞こえず、音が中心の応援に複雑な思いを抱いてきたといいます。

高校1年生から本格的に陸上を始めた山田選手は、初めて出場した2017年のデフリンピックで2つの金メダルを獲得するなどデフ陸上をリードしてきました。

レースでは、スタート前やゴール後の声援が自分に向けられたものかわからず反応できなかったり、観客として応援するときもリズムや歌の動きに合わせられなかったりして戸惑ったことがあるといいます。

山田選手は「これまでの応援は聞こえることが前提のものだったので、どこか一緒に乗り切れないところがありました」と話していました。

こうした経験から、今回、デフ選手の視点から応援のあり方を考えたということで、実際の稽古では選手が走っている映像に合わせながら応援のリズムを考えるなどアイデアを出していました。

山田選手は「見える応援というのは改めて僕らにとって力になるものだと思ったので、相手に伝えたいという気持ちで応援してもらえたらうれしいです」と話していました。

聞こえない人と聞こえる人が一緒に応援

この応援スタイルは聴覚障害のある選手に届けるだけでなく、聞こえない人と聞こえる人が一緒に応援できるよう両者で検討を進めてきました。

その過程では、選手が受け取りやすいように目で見える表現を重視して、完成に向けてどうすればわかりやすいか議論を重ねてきました。

開発チームは「日本、メダル、つかみとれ」という意味で、両手の人さし指と親指で日本列島の形を描いた「日本」を表す手話や、「つかみとる」という手話などを組み合わせて表現しましたが、初めての人には難しいという指摘もありました。

開発にはデフアスリートも参加していて、デフ陸上の山田真樹選手は動きの意味をイラストでも示すことでわかりやすくなるなどのアイデアを出していました。

15日のイベントでは、「日本」などと書かれたボードにイメージしやすいようにイラストも描かれていて、観客たちもステージでの動きをまねしながら新しい応援を実践していました。

20代の男性は、「思ったより簡単でやりやすかったです。『つかむ』というのがいいなと思いました」と話していました。

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