“藤川フィーバー”の中 始まったチームづくり
ファン
「高知の男っぽく熱くガンガンいってくれるんじゃないかなと思います」
ファン
「“球児2世”を7人ぐらい育ててください。奪還日本一です」
11月1日、藤川監督の故郷、高知県で始まった秋季キャンプ。あいにくの雨にもかかわらず、球場は「藤川フィーバー」とも言えるファンの熱気に満ちていました。
指揮官も、最初のあいさつで、その熱気に応えました。
阪神 藤川球児 新監督
「精いっぱい選手たちとともに鍛え、来シーズン優勝を奪還できるように戦っていきます」
藤川監督が掲げたキャンプのテーマは「没頭」。
選手一人一人が一心不乱に課題に取り組み、成長してほしいという思いを込めたといいます。
ベンチの壁には藤川監督直筆の2文字が書かれた紙が張られました。
藤川監督
「とにかく個人の力を引き上げる。ベストは選手が一番引き立つこと。選手が前に出て選手の力でゲームを勝たせる、その後ろに自分がいるというのがベスト。戦うのは選手たち、その責任を背負うのは僕自身というところで、選手には思い切ってやってもらいたい」
重視するのは人と人としての対話
「藤川体制」で目を引いたのは、監督みずから選手と積極的にコミュニケーションを取る姿でした。
「選手と監督も人と人なので」と、投手・野手問わず笑顔で話しかけます。
藤川監督
「選手やスタッフと会話をすることによって、試合の中であうんの呼吸が生まれる。何を考えているかというのをお互いに少しでも理解できるように」
来シーズン、5年目を迎える佐藤輝明選手も声をかけられた1人です。
新体制となって最初のミーティングで「姿勢と背中でチームを引っ張ってくれ」と名指しで言われたといいます。
佐藤輝明 選手
「ことあるごとに『テル頑張れよ』と声をかけてもらい、常に見てくれているなというのをすごく感じるので、こちらもコミュニケーションをしっかり取って、いい関係を築きたいと思えます。アドバイスも理論的というか、日本でもアメリカでもすごく経験のある方なのでいろんなことを聞いて勉強したい」
戦力発掘の秋
ここ15年で最も多い、39人の選手が参加した秋季キャンプ。
藤川監督のねらいの1つが“新戦力の発掘”です。
みずから若手に指導する姿が、報道陣の間で「球児塾」と呼ばれて話題になっています。
藤川監督の“火の玉ストレート”に憧れているという、2年目の門別啓人投手。「投げるときに頭が前に突っ込まないように」と身ぶり手ぶりを交えながら体の使い方について細かくアドバイスをもらいました。
門別啓人 投手
「自分自身が気になっていた部分でいいアドバイスをいただけましたし、今後は自分でも気付かないことを教えていただけることもあると思うので、しっかり聞き入れてやっていきたい」
「打撃が非常にすぐれている」と期待を寄せる20歳のキャッチャー、中川勇斗選手にも熱心に指導。
ホームベースのギリギリにミットを構えるなど、ピッチャーのコントロールを生かすためのアドバイスを送りました。
中川勇斗 選手
「自分ではあまり気にしたことがない部分を教えていただき、とても勉強になりました。しっかり吸収して、練習して実戦にいかしていきたい」
藤川監督
「岡田監督が指揮を取られた2年間は非常に強かった。ただ、固定メンバーだったのでレギュラーと控えメンバーだった選手たちの経験値の差がすごくついてしまったことに危惧を持っている。若い選手はストレスやフラストレーションもたまっているだろうし、僕たち起用する側も同じメンバーばかりでは相手に攻略される。阪神タイガースならではの新しい素材を見つけるというところに今、取り組んでいる」
実戦で躍動した若手投手たち
キャンプ3日目、藤川監督は若手の選手たちにアピールの機会を与えようと、紅白戦を行いました。
阪神がこの時期に紅白戦を行うのは5年ぶりです。
およそ6300人の大観衆が見守る中、結果を残したのは監督から指導を受けた若手の投手陣です。
門別投手は主力バッターを相手にストレートを中心に力で押すピッチング。
2イニングを投げて無失点でした。
同じく指導を受けた5年目の及川雅貴投手も登板。
「びっくりするほどいいボールを投げる」と高く評価されている23歳は、2イニングをノーヒットに抑え、アピールに成功しました。
藤川監督自身、プロ入りから5年間は1軍に定着できず、苦しい思いをしてきたからこそ、若い選手たちの台頭を待ち望む気持ちが強いのかもしれません。
選手の力を引き出し、ともに戦っていく。
藤川監督の新たなチームづくりがスタートしました。
藤川監督
「首脳陣も含めて新しいチームになっていて時間があるようでない。そこに対する危機感は持っていて、チームを仕上げる作業はもう始まっているかもしれない。戦力にはもともと自信があるチームなので戦力が滞ることなく開幕をすっと迎えられるように準備したい」
《取材後記》
秋季キャンプでは、藤川監督を筆頭に選手にも笑顔や掛け声、前向きなことばが多く、チームの雰囲気のよさを感じました。
ただ、その雰囲気が勝利につながっていかなくては意味がありません。
私は藤川監督の就任会見でのことばを思い出していました。
「感情的にならず、柔らかく、選手たちが1番荒ぶるのがグラウンドであるような状態に持っていきたい。勝ちにいきます」
プロ野球は、結果がすべての世界です。
来シーズン、選手たちがグラウンドで“荒ぶる”姿を見せられるのか。藤川監督の真価が問われるのはこれからです。
《プロフィール》藤川球児(ふじかわ・きゅうじ)監督
▽生年月日:1980年7月21日
▽出身:高知市
▽経歴:
・1999年 高知商業高校を卒業後ドラフト1位で阪神に入団
・2005年 46ホールドをマーク 「JFK」と呼ばれるリリーフ陣の一角を担う
・2007年、2011年 最多セーブのタイトル獲得
・2013年 大リーグ挑戦 カブス、レンジャーズに在籍
・2015年 独立リーグ 高知ファイティングドッグスに入団
・2016年 阪神に復帰
・2020年 引退 日米通算245セーブの成績を残す
(2024年11月18日 ニュースウオッチ9で放送予定)
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