11月下旬、ディレクターの私は東京・赤坂のスタジオにいた。トヨタ自動車の野球部で19年間、現役選手として活躍した佐竹功年さん(41)を取材したドキュメンタリー番組のナレーションを収録するためだ。
今回、お願いしたのは名古屋市出身の俳優・岡崎紗絵さん。
私は岡崎さんの声が好きだった。優しく、落ち着きがあって、どこか懐かしさを覚えるようなそんな声。ナレーション撮りでは約束の時間ギリギリまでしっかりと読んでくださった。
「ここ、もう一回いいですか?」と自ら申し出てくれた岡崎さん。俳優としての本気を感じた。一方で「ここ、こんな感じでいけますか?」と私が言うこともある。毎回「すみません!」と最後に言っていた気がする。快く読み直しにもお付き合いいただき、感謝しかない。
そんな岡崎さんに番組の感想を聞いた。
「私もちょっともらい泣きしちゃって」
「社会人野球は詳しいというわけではなかったのですが、今回(VTRを)観させていただいてこんなに内側はすごく盛り上がっているのだと知れたことが、自分のなかでも大きいものだと思っていて、番組のなかでも(元ドラゴンズの吉見一起さんが)おっしゃっていたんですけど『プロ野球を続けるよりもすごく難しいこと』とおっしゃっていたのが『そうなのか』とすごく新しい発見でした」
Q.佐竹さんの挑戦は続く、岡崎さんからメッセージを。
「19年間ずっと素晴らしいプレーヤーとしていらっしゃったので、次のステージは内側からいろんな選手を支えていくということになるのかなと観て思ったので、唯一無二の存在で活躍されると思っています、応援しております」
私は、ナレーション撮りが終わった後の岡崎さんの一言が忘れられない。
ディレクター冥利に尽きる“岡崎さんの言葉”
「社会人野球って本当に一発勝負で厳しい世界なのだと思いました。観てみたいと思いました!」
この言葉は番組のディレクター冥利に尽きると思った。「暑い時期に取材を重ねて、ひとりでアメリカに行って、編集も大変だったよね」そんな言葉は要らない。
社会人野球の良さが少しでも伝われば、佐竹さんの本気がちょっとでも伝わればそれでいい。いや、それだけでいい。
【CBCテレビスポーツ部・上原大輝】
入社5年目「サンデードラゴンズ」ディレクター
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