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 3シーズン目を迎え、盛り上がりを見せるリーグワン。そんななか、大学日本一に輝いた2カ月後にリーグワンに参戦。デビュー戦でトライを決めると、その後の2試合でもトライを重ねた若き逸材がいる。当時大学4年生ながら、アーリーエントリー組初の「デビュー戦から3試合連続トライ」という偉業を成し遂げた次世代フッカー、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 江良颯(えらはやて)選手(22)。すぐにチームにフィットし、結果を出すそのポテンシャルの高さはこの先スピアーズの中心選手となりえる期待の星だ。

■大阪桐蔭から帝京へ「身体で示し続ける」

満開の桜のもと、多くの人が新たなスタートを切る4月。3シーズン目を迎えるリーグワンも佳境に入り、プレーオフや入れ替え戦を見据えた熱い戦いが続く。

昨シーズンの王者、クボタスピアーズ船橋・東京ベイも残りの戦いに向け、気合を入れ直していた。そんなオレンジの軍団に、大学ラグビー界から期待の新星が仲間入りした。フッカー・江良選手。

2歳の時に兄の付き添いで楕円球に触れ、その後はラグビー一筋。高校は、父、兄と同じ、大阪桐蔭高校に入り、2年の時に日本一に輝いた。 江良選手
「小さい頃からあのジャージが好きで。兄も父も大阪桐蔭でラグビーをしていて、僕もそこでやりたいと思っていた。大阪桐蔭で本当に大きく成長できたと思いますし、日本一という経験をさせていただいて、本当にすごく充実した3年間でした」 そして大学は、同じく大阪桐蔭でキャプテンを務めていた奥井章仁選手と共に帝京大学に進み、1年から試合に出場。4年の時には、3連覇をめざす帝京の主将を任された。 江良選手
「1年生の頃から出させてもらっていて、今まで経験してきたことというのを、4年の立場になった時に後輩たちや同期に伝えないといけない責任もありますし。このチームを引っ張っていきたいという思いもあったので。絶対、最後日本一に導くまで身体で示し続けるというか、責任感は強かった」

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■進路の決め手「成長のためのビジョン」

■進路の決め手「成長のためのビジョン」

そんな思いもって迎えた、今年1月13日の国立。第60回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝。江良選手率いる帝京は、落雷での中断や雪が舞うなか、大学日本一に輝いた。

江良選手
「今までで一番嬉しかったですね。本当に幸せでしたし、4年間一緒にやってきた仲間と共に、目標を達成できたという思いや、僕はキャプテンという立場で皆をここまで導けたという幸せもありますし、恩返しというか、今までお世話になった方々に恩返しできたなという実感がわいて。すごく幸せでしたし、嬉しかったです」

主将としてチームを3連覇に導いた江良選手。多くのラグビーファンが注目した、その卒業後の進路。選んだ先は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイだった。

江良選手
「いろんなチームの方に誘っていただいて、色々な方々の話を聞きましたし、その中でフランヘッドコーチと話した時に、これまでは自分の良い点であったり、評価していただいている部分というのを教えていただいたんですけど、そこでフランさんだけは、自分の成長できるポイントを教えていただいて。帝京でもこうやって自分の悪いところを教えていただくことがなかったので、自分にとって絶対成長できるところだと思いました」

成長のためのビジョンを示してもらった江良選手。フラン・ルディケヘッドコーチ(56)は、彼をどう見ていたのか?

ルディケヘッドコーチ
「まず彼と会ったのは3年前ぐらいで、そこから数年良い関係を築いてきた。彼のラグビーIQや性格、スキルは魅力的だと感じた。なのでリクルートチームが動いてくれました。彼はセットピースも良いですし、サインや行動を覚えてもらいたい。もちろん相手チームが変わるなかで、そういったところを勉強してもらいたい。スペースがあればそこを突くスキルもあるし、瞬発力も爆発力もある」

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■初リーグ、驚きのポテンシャル披露でも「常に緊張感」

■初リーグ、驚きのポテンシャル披露でも「常に緊張感」

スピアーズの一員となった江良選手は、昨シーズンから始まったアーリーエントリー制度で、大学在学中に参戦。選手権からわずか1カ月後、クロスボーダーラグビーのチーフス戦にメンバー入り。後半出場し、スピアーズの一員としてデビューを果たすと、さらに1カ月後には、第9節トヨタ・ヴェルブリッツ戦で途中出場。 終了間際にトライを決め、鮮烈なリーグワンデビューを飾った。 江良選手
「ちょっと休んでしまって体が鈍るのも嫌でしたし、デイン・コールズという世界的なフッカーが近くにいて、行かないメリットがないと思ったので、すぐにでも練習させていただいて、コールズのプレーやスキルというのを吸収したいなと思いましたし。ここに早く来るメリットしかないと思ったので。通用するっていう部分と、まだまだ成長していかないといけないなという部分が見つかっているというか、感じているので。そこをこの試合を通してどう成長していくのかというのが、自分にとって課題だと思いますし、通用してる部分は自信につながっていますし、もっとチームに貢献できるような、なくてはならない存在になりたいなと思っています」 ルディケヘッドコーチ
「数年前から何回かチームに合流してくれて、1週間〜2週間練習に参加してくれたので、クボタスピアーズのシステムを分かっていて、役割などを落とし込みやすかった」

翌週の横浜キヤノン・イーグルス戦でも、後半23分に出場。正確なラインアウトからモールで押し込む。そのまま江良選手がインゴールに飛び込んで、逆転の口火を切るトライを決めた。

初めてのリーグワンで、驚きのポテンシャルを見せる江良選手。しかし試合後は自らを律し、気を引き締めていた。 江良選手
「フィジカルのところはリーグワンのレベルはすごく高くて。トヨタ戦もそうですし、キヤノン戦もそうですし。本当に常に緊張感持ち続けてプレーしないと。すべてのプレーを100%で自分の力を最大限出し切るのが大事になるなと感じています」

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■世界レベルプレーヤーとも物怖じせず

■世界レベルプレーヤーとも物怖じせず

デビュー戦から、インパクトプレーヤーとしてチームを勝利に導く活躍をみせる江良選手。

大学選手権優勝後わずが2カ月でリーグワンに参戦、トライを決め鮮烈なデビューを飾った。今は、後半から入るインパクトプレーヤーとして、なくてはならない存在となっている。

そんな短い期間でチームにコミットし結果を残す江良選手を、スピアーズのキャプテン・立川理道選手(34)は、どう見ているのか?

立川選手
「彼はフッカーというポジションなので、もちろんスクラムもスローイングのラインアウトもすごく難しい専門職のなかでもそうやってチームに来てすぐ溶け込んでできるというのは、やはりトップ選手の証だと思いますし、なかなか簡単な仕事じゃないなかでも、自分の仕事を淡々とやりながら、しっかりトライも取れますし、トライのアシストもしますし、リーダーシップでしゃべるところもやってくれるので、本当にすごい選手だなと思います」

世界レベルのプレーヤーも数多くいるスピアーズで、物怖じせずコミュニケーションを取る。この積極性も江良選手の強みだ。

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■「ポスト堀江」の呼び声も…本人は?

■「ポスト堀江」の呼び声も…本人は?

江良選手は、現在フッカーとして活躍しているものの、以前はプロップだった。なぜ、フッカーに転向しようと決めたのか。

江良選手
「高校1年、2年までプロップでやっていたのですが、体も中学の頃からでかかったのでフロントローに行かないといけないだろうと思っていましたし、憧れていた堀江さんのプレーを見て、こういうプレーができるんだというのを見て、なりたいなと思ったのがきっかけです」 そんな憧れの存在である堀江翔太選手とリーグワン第11節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦で対戦。試合後、江良選手は堀江選手から、ある言葉をかけられたという。 江良選手
「試合終わりにロッカールームへ行き、あいさつをさせてもらって。『ありがとう』という言葉と『(自分は)引退するから、次の日本代表を頑張って』と言葉をいただきました」

フッカーとしてのスキルだけでなく、接点での強さや巧みなパスなど、プレースタイルが似ていることから、「ポスト堀江」という呼び声も高い江良選手。今シーズンをもって引退を発表した、大学の先輩でもある堀江選手は、江良選手という次世代を担う若き青葉をどう見ているのか?

堀江選手
「あれだけ有名な選手ですし、どんどん有名になって、代表を引っ張ってもらえる選手に頑張ってほしいなという気持ちです」

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■「27年ワールドカップ」ニュースターがけん引

■「27年ワールドカップ」ニュースターがけん引

“日本代表として世界と渡り合える選手”。桜のジャージを着て戦ってきた戦士からもジャパンで活躍する姿を期待される若き逸材。江良選手自身は、これからの目標をどこに置いているのか?

江良選手
「やっぱり日本代表は常に目指してます。本当に日本代表で活躍して、ワールドカップの舞台で幼い頃から夢見たあの舞台で活躍できるように。そこは今までの努力だと絶対無理だと思うので、本当にこれからというか、今から、自分に厳しくそこに向けて頑張っていきたいなと思います。チームに貢献したいですし、その後、日本代表に選んでいただければ、日本代表でも活躍したいですし。27年のワールドカップを目指していきたいと思っているので」 「(Q.あなたにとってラグビーとは?)僕にとってラグビーとはすべてで、幼い頃からラグビーをしてきて、ラグビーを通じていろんな友達、先輩、後輩だったり。いろんな国の方々と交流することもありましたし。これからの人生にとっても、常にそばにあるものだと思いますし、近くにあってほしいスポーツなので、本当いろんな方々に勇気や感動を届けられるスポーツだと思っているので。頑張っていきたいなと思っています」

オレンジの軍団のニュースター・江良颯選手。目指すは、桜のジャージ。規格外のポテンシャルで次世代を担う!

■ラグビーウィークリー

■リーグワン日程

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