財政制度等審議会の建議提出後、記者会見をする増田寛也・財政制度分科会長代理=東京都千代田区で2024年5月21日午前11時35分ごろ、加藤美穂子撮影

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長・十倉雅和経団連会長)は21日、「経済が力強さを取り戻しつつある今、諸課題に対応するために、財政を強じん化させることが強く求められている」とする建議(意見書)をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。経済回復で「金利のある世界」が戻った今、国の借金である国債の利払い費の増加リスクを意識した財政運営が必要だと強調した。

 地震など頻発する自然災害や中東情勢の緊迫化などを踏まえ、有事に備えた「財政余力」を高める必要性があるとした。政府が6月に決定する、経済財政運営の指針「骨太の方針」への反映を目指す。

 日銀のマイナス金利政策解除で、長期金利は1%に近い水準まで上昇している。建議では、金利上昇で利払い費が増えて更に国債を増発し、それが一層金利上昇を招けば実体経済に悪影響が出ると懸念を示し、「財政が経済の足を引っ張るような事態は避けなければならない」と指摘した。

 日本では東日本大震災や新型コロナウイルス禍などの危機対応を経た後も「歳出構造の平時化」が十分に進んでいない。足元の債務残高の国内総生産(GDP)比は250%と先進国でも突出しているといい、「歳出構造をいち早く平時化させ、持続可能な財政構造の構築に向けて取り組んでいくことが必要」とした。

 課題のある歳出の例として、政府がガソリン価格高騰の「激変緩和措置」として2022年1月から続ける補助金政策を挙げた。脱炭素化を進めるためにも「早期脱却すべきだ」とした。

 構造的な少子高齢化と人口減少の問題を踏まえた対応についても記した。75歳以上の1人当たりの医療費は現役世代の4倍である一方、高齢者世帯の約3割が2000万円以上の金融資産がある。「全世代型社会保障」を実現するには、高齢者それぞれの資産などに応じて窓口負担額を調整するといった仕組みを検討すべきだとする意見も盛り込んだ。

 また、大都市部では医師や診療所が過剰に、地方では過少となる傾向がある。診療所が足りない地域で診療報酬の単価を過剰な地域より高くするようにすることで、医療資源の適切なシフトを促す必要性を訴えた。

 建議の手交後、増田寛也・財政制度分科会長代理が記者会見し、金利上昇局面を踏まえ「政府は高い緊張感を持って財政運営に臨むべきだ」と述べた。【加藤美穂子】

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