帝人は27日、衣料素材メーカーの福井経編(たてあみ)興業(福井市)や大阪医科薬科大学と共同で開発した心臓パッチ「シンフォリウム」を6月12日に発売すると発表した。先天性心疾患を持つ小児の患者向けの製品で、伸びることで心臓の大きさの変化に対応し、再手術のリスクを低減できる。
同製品は開発中に作家の池井戸潤さんが取材しており、小説「下町ロケット ガウディ計画」に登場する心臓の人工弁技術の題材にもなったという。
帝人傘下の帝人メディカルテクノロジー(大阪市)が販売する。2023年7月に厚生労働省から製造販売の承認を取得した。104平方センチメートルの製品は37万8560円。国内では既存製品で約10億円の市場があり、そのうち2割について新製品による置き換えを狙う。
先天性心疾患は生まれつき心臓や血管の構造が通常と異なることで、血液の循環に支障が出る病気。新製品は心臓の一部を切り開いてパッチで補強する手術の際に使う。
シンフォリウムは体内に吸収される糸と、吸収されない糸を特殊な方法で編み、編み目をゼラチンで埋めている。組織が再生する過程でゼラチンと吸収性の糸が分解されることで編み目が緩くなり、パッチが伸びる仕組みだ。
既存製品では貼り付けたパッチの劣化や、パッチの大きさが心臓の成長に合わず手術した箇所が狭くなってしまうなどの問題が起き、再手術が必要なケースも多い。ただ、再手術はコストや患者の身体的な負担が大きい。
27日に開かれた製品発表会で、福井経編興業の高木義秀社長は「シーズ(技術の種)とニーズががっちり合った製品だ。国内だけでなく海外にも展開していきたい」と語った。
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