UAゼンセンはカスハラに関する調査結果を公表した(5日、東京都千代田区)

流通業やサービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンは5日、流通系企業の従業員の5割が顧客による著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の被害にあったとする調査結果を発表した。210組合の従業員約3万人を対象にした調査で、2020年の前回調査から約10ポイント減少したものの、依然高い水準にあるという。

調査は24年1〜3月に実施した。「直近2年以内で迷惑行為の被害にあったことがあるか」という質問に対し、「ある」と答えた従業員は全体の46.8%を占めた。具体的には顧客の不満のはけ口や嫌がらせをきっかけに、暴言を発せられるケースが多かったという。

「印象に残っている迷惑行為」という質問に対しては「暴言」(39.8%)が最も多く、次に「威嚇・脅迫」(14.7%)続いた。「SNS・ネット上の誹謗(ひぼう)中傷」は0.8%で、前回調査(0.3%)より増加した。

一方「あなたの企業で実施されている対策」を聞いたところ「特に対策していない」が42.2%で、前回調査と比べて1.2ポイント改善にとどまった。対策内容は「マニュアルの整備」(28.6%)や「専門部署の設置」(23.4%)だった。UAゼンセン流通部門の佐藤宏太執行委員は「(政府に対して)企業による対策を義務付ける法制化を求めていきたい」と述べた。

パーソル総合研究所が同日まとめた調査でも、顧客と接するサービス職で働く人の3人に1人がカスハラ被害の経験があることが分かった。カスハラ被害者のうち、ここ3年で被害経験が「増えた」という回答が32.6%と、「減った」の13.8%を大きく上回った。

調査は全国20〜69歳のサービス職で働く男女約2万人を対象に24年2月〜3月に実施した。カスハラ被害の経験があるのは全体の35.5%で、このうち3年以内に被害を受けたという回答は20.8%だった。

被害を受けた人への企業側の対応として「被害を認知していたが何も対応はなかった」が36.3%と最も多く、「対応があった」(26.0%)を10ポイント強上回った。「被害を認知していなかった」も19.3%だった。

被害を報告・相談した際に会社や上司から不適切な言動を受ける「セカンド・ハラスメント」の実態も明らかになった。経験した人はカスハラ被害者の25.5%に達した。

1年以内にカスハラ被害を受けた人の転職意向は、そうでない人に比べて1.8〜1.9倍、年間の平均離職率は1.3倍、それぞれ高かった。同研究所の小林祐児上席主任研究員は「カスハラが放置されるなどして、結果的にサービス職の人材不足に跳ね返ってきている」と指摘する。

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